アメリカのジャーナリスト、デヴィッド・ブランカッチョ氏が米国の超越瞑想教師ボブ・ロス氏に、ビジネスにおける瞑想の効果についてインタビューを行った。以下は、『MARKETPLACE』に掲載されたインタビュー記事の抄訳。
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仕事で忙しく長い一日を過ごした後でリラックスするために、あなたなら何をするだろうか? ソファでくつろいだり、ワインを飲んだり、あるいは世界のトップのビジネスリーダーの場合は、瞑想を行う人もいるだろう。具体的には、超越瞑想だ。
超越瞑想とは、1日2回、20分間目を閉じて、心の奥底にある静寂の領域を体験するというもの。
今回は、超越瞑想の教師であり、「静寂の強さ」の著者であるボブ・ロス氏に、金融界における超越瞑想の人気や、健康面での効果について聞いてみた。
デヴィッド・ブランカッチョ:世界最大のヘッジファンドを設立した男、ブリッジウォーター・アソシエイツ社の創業者レイ・ダリオ氏は超越瞑想をしています。彼はそれを誇りに思っているようですが、世界の金融の中心地ニューヨークで、超越瞑想を行っているのは彼だけではありませんね?
ブリッジウォーター・アソシエイツ社の創業者レイ・ダリオ氏
ボブ・ロス:はい。レイは50年間瞑想を続けていて、エネルギー、集中力、明晰さ、創造性が高まると言っていました。瞑想は脳の中にある創造性の中枢を目覚めさせるのです。
また、彼は忍者のようになるとも言っていました。それは興味深い言葉です。すべてのことが非常に速く起こっても、心の中で、それがスローモーションのように見えるというのです。ですから、それをよく見極めることができ、正しい判断を下すことができます。それは彼にとってとても重要なことです。実際に彼はブリッジウォーター社の700人の従業員に瞑想を提供しています。
ブランカッチョ:彼以外にも、ウォール街で瞑想している人はいますか?
ボブ・ロス:はい。ヘッジファンド、銀行、金融業、研究所、マスコミ関係者など、あらゆる人が行っています。ストレスが問題となっていたり、集中力、創造性、革新性、優れた問題解決能力が必要とされている職場で、瞑想が取り入れられています。なぜでしょうか。瞑想は、シンプルなツールで、誰でも利用できるからです。
ブランカッチョ: それで金融界だけでなく、コメディアンのジェリー・サインフェルドとも一緒に活動しているんですね?
コメディアンのジェリー・サインフェルド氏
ボブ・ロス:そうです。繰り返しになりますが、私たちはストレスの蔓延する時代、物事がどんどん早く進んでいく時代に生きています。そのようなときこそ創造性、集中力、心の明瞭さが必要です。そして、ストレスはそうした能力を覆い隠し、思考を曇らせているものです。
ジェリー・サインフェルドはコメディアンですから、常に気を張っていなければなりません。彼は40年以上も瞑想を続けていますが、トップに立つのは大変なことだと言っていました。それ以上に、トップであり続けることはもっと大変なことです。だからこそ、1日2回、20分間のTMの実践は、ジェリーにとって物事の流れを好転させる時間なのです。
ブランカッチョ:ボブ、あなたが書いた本では、この瞑想法は難しくないと強調しています。どうして何も考えないようにすることが難しくないのですか? あることを考えないようにと言われたら、そのことについて考えてしまいますよね。
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ボブ・ロス:私たちがよくきく瞑想法にはいくつかの種類があります。雑念を追い払う必要があるものや、何かを信じなければならない、集中しなければならない、といった瞑想法もあります。幸いなことに超越瞑想にはそのような指示はありません。
海の例えを使うと、海の表面には荒れ狂う波があったとしても、海の深みには静寂があります。私たちの心も同じです。誰もが内側の静けさ、内側のバランスを手に入れたいと思っていますが、それはどこにあるのでしょうか? それは心の奥底にあって、そこはすでに落ち着いています。
そして、超越瞑想ではあるテクニックを学びます。マントラと呼ばれる言葉(音)を先生から教えてもらいます。それは神秘的なものではなく、心を静めるための道具です。そのマントラを使って、穏やかで、静かで、バランスのとれた状態へと至る方法を学ぶのです。結果はすぐに得られます。多くの研究結果が発表されていますが、TM(超越瞑想の略)には長期に及ぶ累積的な効果があることが分かっています。
ブランカッチョ:発表された研究というのは、専門家によって論文の査読(評価や検証)が行われたものですか?
ボブ・ロス: はい。米国医師会誌や米国心臓協会誌によって査読されています。例えば、アメリカ国立衛生研究所は数千万ドルを投じてTMの研究を行い、TMが降圧剤と同等かそれ以上の効果があり、副作用もなく、高血圧やその他の心臓病の病気を軽減することを証明しました。
ブランカッチョ:それについては私も知っていますが、疑いをもつ人もいるかもしれません。あなたの本の中でも、TMを始めたとき最初は家族にも話せなかったと書いてありましたね。
ボブ・ロス:それは1969年のことです。今では時代はすっかり変わり、瞑想に対する人々の捉え方も大きく変わりました。第一に、ストレスの問題は以前にも増して大きくなっています。医学の面から、これまで考えられていた以上に、ストレスが体に与えるダメージが大きいことが分かってきました。
第二に、私たちはいつも薬に頼ろうとします。「私はストレスを感じている。何を飲めばいいのだろうか?」「そうだ、眠れないのならアンビアンを飲めばいいし、子供が勉強できないならリタリンを飲ませればいい。」と考えます。しかし、これらの薬にはすべて副作用があります。
それ以外の方法として、アルコールやコーヒーを飲んでストレスを紛らわそうとするかもしれません。しかし、そうした方法では、ストレスの問題はますます悪化するだけです。私たちは、状況がますます悪くなる方向へと進んでいるのです。そこで、1日のうち数分でもいいので、自分の内側にある静かでバランスのとれた状態へと至ることを勧めています。
一つ簡単な話をしましょう。あるウォール街の男性が、瞑想をしている奥さんに勧められて、14歳の子供と一緒に私のオフィスにやってきました。その男性は、「私は本当に瞑想を学びたいのです。瞑想は妻に素晴らしい効果をもたらしましたし、私は多くのプレッシャーにさらされて、よく眠れないからです。しかし、1日2回20分の時間を、どうやって作るのですか? 私にはそんな時間がありません。」その息子は母親から言われて一緒にやってきたのですが、彼はこう言いました。「お父さん、1日は1440分もあるんだよ。自分の健康のために40分の時間もとれないの?」。「つまり、自分の体を大切にするために、40分の時間さえとれないのか?」と聞いたのです。
時間を作るために、20分早く起きて、朝一番に瞑想を行います。それは睡眠よりも良いものです。睡眠よりも深い休息が得られます。そして、ストレスを取り除くために、一日の終わりにもう一度瞑想します。それによって、家族ともっと楽しく過ごして、よく眠れるようになるのです。
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ソース:The meditation technique that helps some of the world’s top business leaders succeed