スポーツ選手は超越瞑想で静かな闘争心を燃やす

瞑想のブームは今が初めてではない。例えば、1970年代には多くのアスリートの間で超越瞑想の人気が高まっていた。伝説のアメフト選手ジョー・ネイマスも熱心な実践者だった。

当時のニューヨークタイムズは、スポーツ界で超越瞑想が流行っている理由を調査し報告している。以下は、1975年3月30日に発行されたニューヨークタイムズに掲載されたその記事の抄訳だ。

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瞑想は、最先端のトレーニングだ

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スポーツ競技の世界は、常に新しいものを取り入れる傾向がある。アスリートたちは、ほんの一瞬の激しい動きの中で自分の能力を発揮しなければならず、常にプレッシャーにさらされているからだ。彼らは自分の能力を高めるために、新しいテクニックをいち早く取り入れてきた。

この10年間でも、ウェイト・トレーニング、筋肉ストレッチ運動、視覚化など、新しいトレーニング法が人気を集めている。そして今、思いもよらないところから、超越瞑想(略してTM)というトレーニング法がやってきた。科学的研究によると、TMは全てのトレーニング法の中で最も効果があるように見えるテクニックだ。

「超越瞑想というトレーニング法は、ちょっと変わっていると思われるかもしれません」とスポーツ選手のインストラクターを務めるドナルド・R・レオポルド氏は認めている。「しかし、超越瞑想は宗教や哲学ではなく、食事や信念を変える必要もありません。心と体に深い休息を与える、努力のいらない精神的なテクニックです。」と話していた。

戦う前の深い休息

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TMを始めた有名なアスリートの1人が、アメリカン・フットボールの選手ジョー・ネイマスだ。

「私が気に入っているのは、深い休息を与えてくれることです。」とネイマスは述べている。「私は瞑想を必要としていて、瞑想する時間が楽しみなのです。」

オールスター戦に出場したフィラデルフィア・フィリーズの遊撃手ラリー・ボワもTMの実践者の一人。

TMが役に立っている」とボワは話していた。「緊張や不安が取り除かれ、些細なことに惑わさなくなりました。これまでは小さな心配事が積み重なって、いつのまにか28打席ノーヒットということもありました。しかし、今では4打席ノーヒットだったとしても、瞑想によって気持ちを切り替えて、翌日は新たな気持ちで試合に臨むことができます。家でも同じです。以前はよく妻に八つ当たりしていましたが、今は野球のことは球場においてきて、家には持ちかえりません。」と語っていた。

また、米国プロ野球チーム「フィラデルフィア・フィリーズ」のゼネラル・マネージャー、ポール・オーウェンズは、最近、メジャーリーグのミーティングで熱のこもった報告をしていた。

「TMは私に新しい視点を与えてくれました。それによって、心の明晰さが増し、より多くの仕事をより効果的にこなせるようになっています。TMはスポーツ選手だけでなく、主婦やビジネスマンにも役立つと思います。」

目に見える超越瞑想の研究結果

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スポーツ界で、こうした得体の知れないテクニックに注目が集まっている理由を、どう説明できるだろうのか? 多くのアスリートが目を閉じて、楽に座って、1日2回20分を費やしているのはなぜなのか?

その理由は、その効果にあるようだ。TMは、深い休息とリラクゼーションをもたらし、根深いストレスや疲労を解消すると言われている。米国では100,000人以上の人が、このテクニックを学んでいるが、彼らの報告によると、エネルギーと効率性が増し、心が明晰になり、感情の安定性が増すという。そして、最近行われているTMの研究が、その裏付けとなり、懐疑論者に変化を引き起こしているようだ。

「多くのアスリートは、超越瞑想という言葉を聞くと、最初は躊躇します」とインストラクターのレオポルドは語っている。「しかし、アスリートは常にライバルよりも優位な立場に立とうとしています。ですから、研究結果を調べて、実践者の声を聞くことで、躊躇する気持ちは消え失せるのです。」

反応時間、持久力が大幅に向上

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テキサス大学とカリフォルニア大学で行われた研究によると、TMは反応時間や、視覚と手指の協調運動を改善することが確かめられている。

他にも、インド政府の資金で行われた研究によると、最も基本的な運動能力である持久力と真っ直ぐに走る速度が、TMによって大幅に向上することが示された。

プロのアスリートであれば、すべてに気づいている目覚めた心が勝利を得る上で最も重要であると言うだろう。自信に満ちた的確な考えが、優れた肉体活動の基盤となる。だからこそ、TMが心の能力を向上させるという事実は、アスリートにとって重要なのだ。繰り返し行われている研究によって、TMが集中力、学習能力、記憶力、知能といった心の能力を高めることが確かめられている。

リラックスし過ぎて心配?

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一部のアスリートは、TMによってリラックスし過ぎて、競争心が失われるのではないかと心配している。しかし、ジョー・ネイマスには、そんなことは起こっていない。前シーズンのジャイアンツ戦で、膝の傷を危険にさらしてでも、あの有名なタッチダウン・ランを行ったとき、彼はすでに1年以上瞑想していた。

ラリー・ボワは、なぜ盗塁の数が増えたのかと尋ねられたとき、「自信が増して、挑戦しようという気持ちが出てきたから」とシンプルに語っている。

運動能力だけでなく、家族関係も改善

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どうして、たった1つの簡単なテクニックで、こうした幅広い効果が得られるのだろうか? その答えは、実践の性質にあるようだ。

TMを行うと、体の活動が静まって、睡眠よりも深い休息が得られると同時に、心はリラックスしながら機敏に目覚めた状態になる。瞑想による深い休息によって、体はストレスや疲労を取り去り、精神的にも安定性して、心が整うのだ。心と体がリフレッシュされ元気になれば、人生の経験全体が向上するのは理にかなっている。

ネイマスは、他のアスリートたちにTMのことを伝えるときには、次のように話しているという。

「まず最初に、TMが彼らの運動能力を向上させると伝えます。その後で、スポーツ以外でも、家族や友人との生活をもっと楽しめるようになると話すのです。そうすれば、彼らはもっと聞きたがります。結局のところ、アスリートも人間ですから」と語っていた。

TMが広まっているのは、スポーツ競技の世界だけではない。今では、全米の200の都市にTMのセンターがあり、40以上の大学が超越瞑想のコースを提供している。

ソース:Athletes Find Spark in Transcendental Meditation