最近、優れたビジネスパーソンの資質として、頭の良さを表す知能指数(IQ)よりも、心の知能指数(EQ)の方が重要視される傾向があります。心の知能指数(EQ)とは、自分や他人の感情を理解し、それらをうまく扱う能力のことで、同僚や上司との良好な人間関係を築き、仕事を成功へと導く上で欠かせない資質です。
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では、どうしたら心の知能指数(EQ)を高めることができるのでしょうか。
心の知能指数(EQ)の概念を広めたダニエル・ゴールマン氏は、瞑想によって心の知能指数、特に自己認識力を高めることができると説いています。
その具体例として、ソニー・ピクチャーズホームエンタテインメントの元社長、デービッド・ビショップ氏の体験談をご紹介しましょう。
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エビデンスが示していることは、ある組織のリーダーや、これからリーダーになろうとしている人にとって、瞑想は行動の効率性を高める重要な要素であるということです。私自身も自分のキャリアを積み上げていく上で、瞑想が非常に大きな価値があることに気づきました。そこで、そうした私自身の経験と、瞑想がリーダーシップに必要な資質を高めることを示す研究結果についてお話ししたいと思います。
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いかに瞑想がビジネスで役立ったのか
私は1974年に超越瞑想(略してTM)を学びました。他の多くの人たちが経験しているように、始めてすぐに、自分の世界をうまく扱えるようになりました。自分が進むべき方向がわからず、もがき苦しんでいた10代の若者から、フルタイムで仕事をしながらMBA(経営学修士号)を取得する意欲ある学生に生まれ変わったのです。
そして、当時は新規産業だったホームビデオ業界のマーケティング・マネージャーとしてMGMスタジオに就職しました。そこからの出世は非常に早く、1年以内に副社長に昇進。その後、世界中にオフィスを構えるグローバル部門の社長に就任しました。そして最終的に、ソニー・ピクチャーズ・ホーム・エンタテインメントの社長に抜擢されたのです。
ビジネスで欠かせないEQとの関係
こうしたキャリアを築き上げる過程で、瞑想が大きな助けとなりました。経営者にとって不可欠な自己認識、適応性、共感といった心の知能指数(EQ)が、瞑想によって成長したからです。
例えば、瞑想によってストレスを取り除くことで、自分のことをより深く理解し、他の人にも共感できるようになりました。その結果、社内のチームを率いて新製品を売り出すときに予想を上回る収益を上げ、その過程でメンバーの熱意を高める社内文化を浸透させることができたのです。
自己認識の高さが、財務成績を上げている
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30年間に渡って、私は高い業績を誇るチームを育て上げ、指導してきましたが、その経験に加えて、コロンビア大学で「経営者と組織開発」の大学院修了証を取得しました。私の研究論文は、リーダーの心の知能指数が高いほど、業績が上がることに焦点を当てています。心の知能指数が高い最高経営責任者は、ますます複雑化するビジネス環境にうまく適応することができるからです。
例えば、世界クラスの人材スカウト会社「コーンフェリー」が約500名の重役を対象に行った調査によると、自分のことをよく理解している経営者は、そうでない経営者よりも25%も高い財務成績を上げていることがわかっています。
そして、2014年にニューヨーク科学アカデミーの年報に掲載された研究によると、超越瞑想には自己認識力を高める効果があることが示されています。
瞑想は、脳の経路を鍛え人格を育む
また、思いやりや寛容さといった「より穏やかな人格」を備えた経営者は、企業の業績を上げるという研究結果があります。
ミネアポリスに本拠を置くリーダーシップ・コンサルタント会社「KRWインターナショナル」が行った調査によると、人間性のある経営者、つまり寛容さや思いやりといった人格を備えた経営者は、2年間で総資産の9.35%の収益を上げているということです。これは、人間性の低い(性格面で評価の低い)経営者の約5倍に相当します。
とはいえ、思いやりや寛容さといった人格を成長させるには、地道な努力が必要であり、手っ取り早い近道はありません。スポーツ選手が最高の力を発揮するために筋肉を鍛えるのと同じ様に、最高のリーダーシップを発揮するためには、脳の経路を鍛える必要があるのです。
そのための実践法として、TMは誰でも簡単に行うことができ、短期間に効果を実感できるものです。必要なのは瞑想を毎日の習慣にするという、ちょっとした努力だけです。
仕事だけではなく、幸せな家庭を維持するために
過去に行われた研究は、TMテクニックによって、知能指数・創造性・学習能力が向上し、脳機能が高まり、統合された人格が養われ、効率性や生産性が高まることを示しています。
こうした効果は仕事だけでなく、私生活をも豊かにしてくます。私はいつも会議や海外出張でスケジュールがいっぱいでしたが、瞑想によってエネルギーを充電することで、息子の野球チームを指導したり、娘の合唱団のコンサートに参加することができました。瞑想を毎日の日課にすることで、忙しいスケジュールを維持しながらも、家族との時間を大切にすることができます。
1日2回、20分間のTMは、仕事の業績を上げるだけでなく、幸せな家庭生活を維持するための貴重なツールです。そのことは私の経験からも明らかであり、科学的なエビデンスがそれを裏付けています。
ソース:Former Sony Exec Talks about TM and the Art of Developing Emotional Intelligence