世界の医療関連のニュースサイト「News-Medical.Net」に、超越瞑想によって教師のバーンアウト(燃え尽き症候群)が改善するという研究結果が掲載された。以下はその記事の抄訳である。
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「Frontiers in Education」誌に掲載された新しい無作為化比較試験によると、超越瞑想(TM)を取り入れた教師育成プログラムに4カ月間参加した教師は、感情的な消耗(バーンアウトの主要な要因)、回復力、自覚されたストレス、疲労、うつ状態に有意な改善が見られた。
教師は日々、多くの困難な状況の中で生徒の学習を助けることが要求され、強いストレスを抱えている。こうした教師の心身の健康を改善する上で、瞑想が有効であることが今回の研究で実証された。
最近、バーンアウトの有害な影響や、回復力の必要性を示す研究結果が増えてきたため、サンフランシスコの教育学区では、教師たちに疲労感や感情的な消耗を軽減するツールを提供しようとしています。それによって、生徒たちにより効果的な教育を提供し、成績を上げるためのサポートをしようとしているのです。
本研究の執筆者であり、Center for Wellness and Achievement in Education(教育における健康と達成のセンター)事務局長ローラン・ヴァロセク博士
世界中の教師に影響を及ぼしているバーンアウト
今、社会人の70%が常にストレスを感じ、20%以上がバーンアウトを経験している。特に教師は、授業やその他の活動の中で、様々な要望、ストレス、疲労に直面することが多い。バーンアウトの症状には、感情的な消耗、個性の喪失、業績の低下が含まれているが、教師に見られる症状としては、欠勤、生徒や同僚へのイライラ、責任感の欠如、仕事の質の低下、離職などが挙げられる。
超越瞑想は教師のバーンアウトを減らし、回復力を向上させる
「Frontiers in Education」に発表された新しい無作為化対照研究には、サンフランシスコ統一学区の78人の教師が参加した。研究の結果、4カ月間、超越瞑想(TM)を実践した教師は、精神的、肉体的、感情的な健康の測定値に有意な改善が見られた。
過去に行われた研究でも、TMによってストレスが減り、心の健康が改善されることが示されてきたが、本研究は、瞑想を取り入れた教師育成プログラムが、バーンアウトと回復力(心の健康に関わる2つの重要な要素)に与える影響を調査した初めての研究だった。
本研究では、「バーンアウトの尺度(MBI)」によって測定した感情的な消耗(バーンアウトの主な要因)を評価項目としている。その結果、瞑想を取り入れた教師育成プログラムは、バーンアウトを軽減すると同時に、回復力、自覚的なストレス、疲労、うつ状態にも改善が見られることが確かめられた。
教師のバーンアウトと生徒のストレスや学業成績との関係
最近の研究では、教師のストレスと生徒のストレスレベルの直接的な関連性が示され始めている。カナダのブリティッシュ・コロンビア州の中学校では、教師のバーンアウト、燃え尽き症候群のレベルが高まると、生徒の血中コルチゾールのレベルが上昇することが確かめられた。
また、教師のバーンアウトは、生徒への責任感の低下、授業の準備不足、欠勤につながり、生徒の学業成績の低下にも深く関わっている。教師の欠勤は、生徒が適切な能力をもたない代理の教師から学ぶことになり、最終的には教師の離職にもつながる。そのため、今回の研究が示しているように、瞑想を取り入れた教師育成プログラムは、教師の感情面での幸福と健康を高め、それによって、生徒の学習意欲を増すような教育環境を生み出すことになるだろう。
参照文献:Valosek, L., et al. (2021) Meditation Effective in Reducing Teacher Burnout and Improving Resilience: A Randomized Controlled Study. Frontiers in Education. doi.org/10.3389/feduc.2021.627923.
ソース:Study shows potential benefits from meditation-based teacher development program