家庭環境によるストレスを瞑想で克服した子供たち

デヴィッド・リンチ財団で働くナオミ・ルーチニックさんは、カリフォルニア州ロサンゼルスにある大学進学の準備校ニュービレッジ女子学院で超越瞑想の指導を行ってきました。

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その彼女がTEDトークに出演し、ニュービレッジ女子学院の生徒に超越瞑想(略してTM)がどのような影響を与えているのかを説明しています。この学校には、恵まれない家庭環境の女生徒が多く、以前は喧嘩が日常茶飯事でしたが、瞑想を取り入れてからは、ケンカはほとんどなくなったと言います。

家庭環境のストレスにさらされた子供たち

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スピーチは、ニュービレッジ女子学院の生徒の一日から始まります。

「想像してみてください。彼女たちは朝5時に起きて、妹や弟が学校にいけるように準備をし、その後で自分もバスを2台乗り継いで学校に向かいますが、時間に間に合わずいつも遅刻してきます。放課後もまた2台のバスを乗り継いで仕事に向かい、それから家に戻ってくるのは夜中の2時です。母親が本国に強制送還され、里親から里親へと転々として、誰にも言えないような虐待を受けている生徒もいます。」

彼女たちは日々の生活で多くのストレスにさらされ、それが心的外傷後ストレス障害(PTSD)を引き起こす原因になっています。「PTSDは心と体を過敏な状態にしてしまう」とストレス障害が及ぼす影響を彼女は次のように話していました。

PTSDを抱えていると、誰かに助けを求めたり、自分を表現したり、新しい人間関係を生み出すことに恐れを感じてしまうのです。

瞑想で癒やされ、不安が消える

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そんな状況の中で、特別な日課が行われるようになりました。

「毎朝、最初の授業前と昼食後に、教室のすべての明かりを暗くします。生徒と教師は目を閉じて15分間、超越瞑想を実践するのです。」

「教室の明かりがついて目を開けると、不安も消えてなくなっています。生徒たちはリフレッシュし、リラックスして、学ぶ準備ができるのです。まるで脳がリセットされたかのようにです。」

ニュービレッジ女子学院の生徒にとって、この時間は、一日の中で唯一、静寂を体験できる時間です。

1970年代に、超越瞑想が公立学校で導入されるようになってから、多くの批判が巻き起こりましたが、そうした批判を打ち消す科学的研究が数多く行われてきました。

「1970年代以降、超越瞑想に関する400以上の研究が、論文審査のある一流の科学雑誌に発表されています。それらの研究は、アメリカ国立衛生研究所など信頼できる研究機関で行われたものです。こうしたすべての研究は、規則的なTMの実践によって、心拍数の低下、不安の減少、うつ病の緩和、集中力の向上が見られることを示しています。」

脳によるストレス反応が学習を妨げている

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特に脳波の研究について、彼女は次のように説明しました。

「脳波の研究から、TM中に、脳の異なる部位がより秩序正しく一体となって機能していることがわかっています。また、TM中、アルファ波が脳の背面から前頭前野全体に広がっていくことも確かめられています。脳における前頭前野は、脳の最高経営責任者であり、すべての重要な決定が行われる場所です。」

そして、ストレスが前頭前野に与える影響を次のように説明しました。

「ストレスは前頭前野にコルチゾールを溢れさせ、一時的に機能を停止させます。ですから、慢性的にストレスを受けていると、前頭前野の機能が慢性的に停止してしまうのです。最高経営責任者が機能しなくなると、恐怖といった感情の中枢である扁桃体が、主導権を握ることになります。」

その結果、勉強に集中できなくなるのです。

「前頭前野の高度な思考能力が低下して、恐怖が支配的になっているときに、数学や英語といった知識を脳が処理できると思いますか? それは無理です。脳にとっては、まるで戦時中のような状況に陥っているので、本が落ちただけでも、身をかがめて逃げだそうとします。」

喧嘩がなくなり、学習意欲が高まる

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こうした話の流れから、ナオミさんは次に、TMが生徒にとって非常に有効である理由を説明しました。

「TMは、恐怖心を生み出す扁桃体を静めて、前頭前野を活性化し、生徒たちを安らいでいながら機敏な状態にします。それは知識を学ぶ上で理想的な状態です。」

ニュービレッジ女子学院は、生徒の経歴や家庭環境を除けば、他の女子校とさほど変わりはありません。

「ここには、深刻なトラウマを経験した女生徒がいます。ニュービレッジ女子学院が開校した頃、喧嘩は日常茶飯事。中退率は平均を大幅に上回り、大学への入学を出願し、進学する学生はほとんどいませんでした。」

「ニュービレッジ女子学院が超越瞑想を導入した後、喧嘩は少なくなり、今ではほとんどなくなっています。今年は1回も喧嘩は起こっていません。また、昨年は4年制大学への入学資格のある生徒は全員出願し、入学できました。」 

ナオミさんが超越瞑想を教え始めてから、多くの女生徒が、TMによって生活がよりよくなったと報告しています。

「何年もの間、彼女たちは不眠症を患っていましたが、TMを学んで初めて、夜通し眠ることができるようになったと話しています。」

「医者から、もう抗うつ剤は必要ないと言われた生徒もいます。」

心の空白を瞑想が埋める

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また薬物依存症は、この学校のすべての生徒たちに共通する一つの大きな問題です。一般の依存症回復プログラムは、自制心に基づく自己管理が中心であるため、急に薬物を断ち切ろうとすると、「薬物で満たしていた心に空白ができてしまう」と報告する人たちがいます。

「瞑想がその心の空白を埋めてくれると、ある生徒が話していました。薬物やアルコールを乱用する理由の1つは、ストレスがたまっているからです。ですから、瞑想によってストレスが軽減されると、薬物やアルコールの摂取量が減るのは驚くべきことではありません。」

ナオミさんはまた、拒食症や過食症に苦しんできた自分の過去について振り返り、TMが自己改善の助けになったと説明しました。

「その当時、私の頭の中は恐怖や自己嫌悪でいっぱいだったのですが、瞑想するたびに、それが静まっていきました。猛烈なスピードで動いていた心が落ち着いていき、濃い霧が晴れたかのように、頭がはっきりしてきたのです。規則的に瞑想を行った最初の週、下剤の使用量が減りました。それは短期間に起こった非常に大きな成果です。」

そう話した後、ニュービレッジ女子学院の生徒であるステファニーがTEDのステージに現れ、TMが自信を与えてくれたと話しています。

「これまでは、自分がこうして人前に立って話したり、自己紹介をするなんて、想像もできなかったことです。」

「今、私にとってTMは、いつでもどこにでも持ち運べる最高のツールです。私は内向的な人間なので、一人でいることが多いのですが、TMをすることで、一人でいても不安や動揺を感じなくなりました。」

「瞑想は私に、解放された静けさを与えてくれます。」

超越瞑想についてはこちら
ソース:Empowerment through Transcendental Meditation: TED Talk

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