双極性障害という世界の終わりに幸せを見た

双極性障害(躁うつ病)に苦しんでいた映画製作者ポール・ダリオ(写真左)は、超越瞑想と規則正しい日課を通して、創造性を開花させていった。そんなポールのエピソードを、デヴィット・リンチ財団の理事長ボブ・ロス氏がポッドキャストで語っている。以下はその抄訳。

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さよなら

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ポール・ダリオは午前2時に、父親に「さよなら」を言うために電話をかけた。父親はその声を以前にも聞いたことがあったため、それが何を意味しているのかを察知し、その行為を止めさせるために、息子に45分くれないかと頼み込み、彼のアパートに駆けつけた。

ポールは長い間、双極性障害(躁うつ病)を患っていた。双極性障害は、情緒、エネルギー、活動のレベルが異常に変化する精神障害である。深刻なうつ状態におちいったときには、数日間または数週間もベッドから起き上がれないこともあるほどだ。

静かな一角で瞑想

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私がポールと初めて会ったのは2005年のことだった。彼は素晴らしい映画製作者であり、デヴィッド・リンチの大ファンだった。その日、デヴィッド・リンチが創造性、瞑想、映画について話す講演会があり、私はその司会を務めていた。ポールはその講演会を聴きに来ていて、できれば講演の後デヴィッドに会って、自分が作った映画の台本を見せ、指導を受けたいと思っていた。

ポールが舞台裏にやってきたとき、彼は明らかに精神的に不安定な状態だった。ポールは瞑想を学んでいたが、規則的に実践していないと話していた。デヴィッドは、とても穏やかに私とポールの方を見て言った。

「ボブ、ポールと少し瞑想して、リフレッシュして来てはどうかな。その後で話そう。」

ポールと私は静かな一角を探して座り、20分間瞑想した。その後で、ポールは打ち解けて話し始めた。

双極性障害の治療は規則的な日課

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当時、ポールは5年ほど双極性障害を患っていて、入退院を繰り返していた。そのうちの1回は、6週間の間、自殺を図らないように監視するための入院だった。家族もポールを熱心に支え、できる限りの治療を試みたが、ポールは治療に手応えが得られなかったという。

双極性障害を抱える人に推奨されるのは、時間どおりの就寝と起床、運動、瞑想、食事である。それによって、体内の24時間周期のリズムを保つのだ。ポールは規則正しい生活によってリズムの維持に成功し、投薬によって安定性も増していたが、健康、創造性、そして幸福感は向上しなかった。ポールはあまりにも長い間うつ状態であったため、それが彼の人生であり、運命だと思っていた。

暗闇だけが人生ではない

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しかし、その講演会をきっかけに、彼は瞑想を心から楽しみ始めた。彼が同業者のジェフ・ライスと出会ったのはその頃である。ジェフはその時、瞑想歴10年で、双極性障害も経験していた。

ポールはジェフに尋ねた。
「瞑想を始めてから、幸せを感じたことはありますか」。
ジェフは「80%の時間は幸せだった」と答えた。
その言葉にポールは大きな衝撃を受けた。自分の人生にも暗闇以外のものが存在する可能性を見つけたからだ。

それ以来、ポールは、家族に支えられながら、投薬治療、心理療法、運動、適切な食事、そして瞑想の規則的な実践を続けた。それによって、彼の創造性は大きく花開いた。現在は結婚して二人の男の子に恵まれ、制作した映画『タッチト・ウィズ・ファイア』も高い評価を受けている。ポールは語っていた。

「人生はどんどん良くなっています。ときどき暗闇にはまり込むこともありますが、そこから抜け出すのが早くなりました。」

ソース:Stay Calm: Routine is Empowering

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