現代音楽に多大な影響を及ぼしてきたリック・ルービンが、デヴィッド・リンチ財団の『調和の生涯』賞を受賞した。音楽のジャンルにとらわれることなく、最高のミュージシャンと一緒に仕事をしてきたリックは、過去20年間で最も有力なプロデューサーと言われている。彼は14才のときに超越瞑想を学び、長年にわたって瞑想を続けてきた。この授賞に際し、ローリングストーン誌がリック・ルービンにインタビューを行い、瞑想が彼の人生や音楽に与えた影響について尋ねた。以下は、その記事の抄訳である。
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「自分が称えられることを決して望まない男性を称えるために、私たちはここに集まっています。それは、非常に喜ばしいことです。」とディクシー・チックスのシンガー、ナタリー・メインズは語った。その男性とは、伝説的なプロデューサー、リック・ルービンだ。彼は、デヴィッド・リンチ財団から、”2014 Lifetime of Harmony Award”(2014年『調和の生涯』賞)を受け取ることに同意した。それが超越瞑想の目的──デヴィッド・リンチ財団の主な活動は、問題を抱えた人々に超越瞑想を教えることにある──を達成することにつながるとリンチは彼に確信させたからだ。ルービンは、賞を受け取るためにステージに上がることさえしなかったが、リンチは聴衆の中にいるルービンのテーブルまで、トルフィーをもっていった。彼は他のゲストと一緒に座っていたが、その中には緑色の髪の毛のフリー(レッド・ホット・チリ・ペッパーズのメンバー)も含まれていた。
授賞式が始まる前、髪の毛をきれいに切り込んだルービンは、誰もいない宴会場の椅子に、素足のまま、足を組んで座っていた。それはまるで、長い髭をたくわえたグル(導師)のようだった(Tシャツと短パン姿であったにも関わらずだ)。そして、瞑想が彼の人生と音楽に与えた影響について語り始めた。
デフ・ジャムを創設したリック・ルービンとラッセル・シモンズ
──どうして超越瞑想に興味をもったのですか?
リック:14才の時、学校に行くと首が痛くなるので、生まれたときから世話になっている小児科の先生に診てもらったんです。彼は、当時にしては非常に先進的な医師で、「首の痛みはストレスが原因だから、瞑想を学ぶといい」と勧めてくれました。彼がそう言ったとき、「両親は賛成しないだろうな」と思ったのですが、「お医者さんがそう言うなら……」と言って両親も了解してくれたのです。
──瞑想を始めるとき、疑いを感じませんでしたか?
リック:瞑想に対しては何の疑いもありませんでした。私は熱狂的なビートルズ・ファンだったので、ビートルズがマハリシ・マヘーシュ・ヨーギーから超越瞑想を学んだと聞いて、ビートルズが関わったものなら何でもやってみたいと思ったのです。
──超越瞑想は効果がありましたか?
リック:首の痛みに効果があったかどうかは憶えていませんが、私の人生には明らかに大きな影響がありました。14才からニューヨーク大学を卒業するまで、ずっと瞑想していました。その後で瞑想を止めたのは、私なりの自分探しだったんだと思います。瞑想は、両親と一緒に暮らしていた頃の私の生活の一部だったからです。
カリフォルニアに移った後、5年ぶりに超越瞑想を再開しようと決意しました。実際に始めるまでには、数カ月かかったのですが……。それは、私にとって一大決心のように思えたからです。そして、最初に瞑想を行ったとき、私という人間は、何年にもわたる瞑想の体験によって形作られていたのだと気づきました。私の周りの多くの人が見ようとしない、あるいは見ることのできない深いレベルまで、私は物事を見通すことができるように感じます。
──瞑想は、音楽の仕事にどのような影響を与えましたか?
リック:瞑想することで、一緒に働いているアーティストとよい関係を保ち、相手の話をよく聞くことができるようになりました。それは、私の仕事にとって非常に重要なことです。
──誰かとスタジオで仕事をしていて、その人達も超越瞑想を学べば効果があるのにと思うことはありますか?
リック:しょっちゅうです。それで、アーティストにも瞑想を勧めていますし、アルバムを作るときには、レコーディングの前に一緒に瞑想することもあります。レッド・ホット・チリ・ペッパーズと『カリフォルニケイション』を制作したときも、毎回レコーディングの前に、最低でも2人のメンバーと瞑想していましたし、ときには3~4人で瞑想したこともありました。
音楽を作るとき、彼らはどうでもいいことをたくさん考えているんです。超越瞑想は、余計な考えを取り除いてくれるので、目の前にある仕事に集中することができます。経営側が何を望んでいるのか、レコード会社は何を求めているのか、ラジオ局の人々はどう考えているのか、そんなことを考えなくなるのです。