アスリートと瞑想

アスリートたちが静かに座って瞑想することで、記録を伸ばすことができるでしょうか。それは突飛に聞こえるかもしれませんが、本当のことです。瞑想がもたらす心の静けさや落ち着きは、アスリートが試合中に最大の力を発揮する基盤となっています。

米国メジャーリーグの投手バリー・ジトは、絶好調のときに体験する内面の静けさについてこう語っています。

「ピッチングが絶好調のときは、マウンド上で自分だけが存在するように感じることがあります。周辺の熱狂した渦のなか、私は静かな泡のなかにいて、投球の一つひとつを目撃しているのです。こうした体験は、超越瞑想の実践によってもたらされたものです。(シリウスXMラジオ番組「ストレスのない成功」より)」

こうした意識の静かな状態をアスリートたちは、よく「ゾーンに入る」と表現しています。それが球場の加熱した雰囲気にのみ込まれることなく、最高のピッチングを生み出すのです。

瞑想による体験は、ゾーン体験

「ゾーンに入る」とは、静かで研ぎ澄まされた意識のなかで、その人がもつ最大限の能力を発揮できる状態です。スペインの元サッカー選手であるルベン・サンチャスも、瞑想によってゾーンに入りやすくなったと語っていました。

「超越瞑想によって、流れにのる──ゾーンに入るという体験を得る体系的な方法を身につけることができました。瞑想は、試合中に、活動的であると同時に冷静になる能力を与えてくれます。そのため落ち着きが増し、パフォーマンスが向上し、攻撃的になるのではなく、創造的になれるのです。」

こうしたゾーン体験は、超越瞑想中の体験とよく似ています。では、瞑想すると一体、何が起こるのでしょうか? 超越瞑想を始めると思考活動が自然に静まっていき、やがて深く安らいでいる状態とともに限りなく目覚めた自分を体験します。これは安らぎの機敏さと呼ばれる状態です。この状態を繰り返し体験することで、瞑想のあとの活動中にもリラックスしていながら、鋭く研ぎ澄まされた意識状態を保てるようになります。そのときに、静かな意識のなかで最高のパフォーマンスを発揮できるのです。

瞑想は脳機能の統合を高め、最高の力を引き出す

近年の研究から、超越瞑想の実践は脳機能の統合を高めることが明らかになりました。脳の統合の度合いは知能や運動能力と関係していて、世界的なトップ・アスリートや経営者は、一般的なアスリートや経営者と比較して脳の統合の度合いが高いことも確認されています。

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 この研究では、超越瞑想を平均7年間実践している普通の人たちの脳の統合のレベルを測定しました。その結果わかったことは、超越瞑想を規則的に実践する人たちは、世界的なトップ・アスリートや経営者に負けない、統合された脳機能を備えているということです。

こうした高度に発達した脳は、スポーツでもビジネスでも、どの分野においても優れた効率性を発揮します。アスリートが座って静かに瞑想することは、脳をトレーニングし、自分の力を最大限に引き出す優れた方法であると言えますが、それは一般の人々にも言えることです。瞑想してゾーンに入る体験が増してくれば、私たちの生活はもっと効率的になっていくに違いありません。