科学的根拠に基づく超越瞑想の効果
学業成績の向上/大学等の進学の増加
学業成績の向上
【解説】189人の(授業についていけない)生徒に対して、テストの3カ月前から毎日学校で1日2回、超越瞑想(以下、TM)を実習するグループと何もしないグループに分けて、カリフォルニア州に住む公立学校の2年生(小学生)から11年生(高校生)が毎年受ける STARテスト(カリフォルニア州の標準テスト)を用いて算数と英語の成績の伸びを比較しています。
その結果、算数では、成績水準が1以上になった生徒の割合はTM実習をした生徒では40.7%、TM実習をしてない生徒では15%(有意確率*が0.01)で、英語では成績水準が1以上良くなった生徒の割合はTM実習をした生徒で36.8%、TM実習をしてない生徒で17.2%(有意確率が0.05)となり、TM実習をした生徒とTM実習をしてない生徒のグループで統計的に優位な差が見られました。このことは、TM実習が算数と英語の両方で成績向上に寄与していると考えて良いと統計学的に言えることを示しています。
統計の有意の補足:有意確率(p-valueでpと書きます)はある事象(この例では、TM実習をしている生徒(グループ)とTM実習をしていない生徒(グループ)で成績の向上に差が出ること)が偶然起こる確率を示しています。
算数で上記のような差が2つのグループで偶然起こるのは0.01(1%)であり、このような1%のことが偶然起こったというよりも、2グループの差はTMを実習しているか否かだけ(実験では、両グループでそれ以外の条件は殆ど同じにしていますので)なので、この差はTMの実習か非実習によるものと判断して良いという考え方です。一般に有意確率pが0.05よりも小であれば統計的に有意と判断します。
大学等の進学の増加
【解説】この研究では、TMの実践が高校の卒業率や大学への進学率等をもたらすかを検証しています。調査・分析は、米国東海岸の都市部の高校の学校記録を分析する方法で、4年の間に入学した235人の学生全員を対象にして行われています。
図2示すように、TMを実習する生徒の大学等への進学率は 59.3%であり、TMを実習しない生徒の進学率は 33.3% であり、有意な差があることが示されました(有意確率P=0.002)。また、その他にも、TMを実習しない生徒と比較して、TMを実習した生徒の卒業率が15%高いことも示されました(有意確率p=0.012)。このようにTMの実習と非実習で、生徒の卒業率や進学率等に関して、はっきりとした有意な差が生じたことが示されています。
掲載ジャーナル:Educationは四半期毎に出版される教育分野の査読付き学術雑誌(quarterly peer-reviewed academic journal)で、1880年スタートという長い伝統を持っています。Educationの論文はEBSCO databases(EBSCO社による広範な学術分野の査読誌の全文情報を収録したデータベース)やEducation Resources Information Center(教育研究と情報のオンラインデジタルライブラリで米国教育省の教育科学研究所が後援)等に索引付けされ要旨が登録されています。
[Reference]
[1](図1の文献):Nidich S, Mjasiri S, Nidich R, Rainforth M, Grant J, Valosek L, Chang W, Zigler RL. Academic achievement and Transcendental Meditation: a study with at-risk urban middle school students, Education,131(3), pp.556-564 (2011).
[2](図2の文献):Colbert, R. D., and S. Nidich. “Effect of the Transcendental Meditation Program on Graduation, College Acceptance and Dropout Rates for Students Attending an Urban Public High School, Education, 133(4), pp.495-501(2013).
解説:土田賢省(東洋大学教授)
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巻頭写真:UnsplashのDylan Gillisが撮影した写真