シサノ元大統領がケニアの国民に呼びかけた「国家に平和をもたらす方法」

モザンビーク共和国のシサノ元大統領は、内戦と干ばつで苦しんだ自国を救うために、1993年、超越瞑想を国家(政府・軍隊・警察)に導入した。それ以来、モザンビークは、アフリカで最も経済発展と民主化が進んだ国の一つとなった(過去の記事)。

その功績が認められ、2007年にシサノ元大統領は、アフリカの優れた指導者へ贈られるモ・イブラヒム賞の第一回受賞者となる。この賞は、「アフリカのノーベル賞」とも呼ばれ、自国の発展に寄与し、経済成長だけでなく医療や福祉も向上させ、民主的な統治を行った指導者に対し授与されるものだ。

英国の新聞「インディペンデント紙(2007年10月30日)」は、受賞後、シサノ元大統領と超越瞑想との関係について、次のようにレポートしている。

「シサノ氏は、必ずしも支配者が権力を保持していなくても良い、ということを証明している。おそらく彼の精神は、彼が実践している超越瞑想から来ているのだろう。事実、超越瞑想に関連した本のなかで、シサノ氏はこのように述べていた。

『最初に私自身が超越瞑想を実習し始めました。次に家族に紹介し、大臣たちに、政府の役人に、軍隊に紹介しました。その結果、私の国に政治的平和と自然の調和がもたらされたのです。』」

そして、当時のモザンビークの発展について、同紙は、次のように述べている。

「シサノ氏の政権下で、国は平均約8%の経済成長を達成した。1977年から2003年までに、約2千万人の人口のうち、およそ3百万人の国民が極度の貧困から救われた。これにより、5歳以下の子供の死亡率は35%減少し、小学校に行く子供達が65%増加した。」

記事によれば、モ・イブラヒム賞の審査員である元ナイジェリア大臣のオコンジョ・イウェアラ氏は、シサノ元大統領を次のように讃えている。

「私は、シサノ氏の慎み深さ、シンプルさ、謙遜さが何よりも素晴らしいと思います。彼は余計な口出しはせず、たくさんの側近に囲まれているわけでもありません。ある人たち、特に国の首長たちは、大変に尊大です。しかし、シサノ氏について言えば、彼が大統領であったことを忘れてしまうほどです。」

現在、シサノ元大統領は、アフリカの飢餓、平和、経済発展を助けるジョアキム・シサノ財団を設立し、活動を行っている。ジョアキム・シサノ財団の理事長には、米国のマハリシ経営大学の卒業生である彼の甥が就任し、アフリカの平和と発展のためにヴェーダの知識や超越瞑想を活用している。


マハリシ経営大学の元学長、ベブンモリス博士と懇談するシサノ元大統領

2010年に、米国のワシントンDCで、海外に住むケニア人が集まる、年に一度のゴットバッガ会議では、シサノ元大統領は、ケニアに平和を生み出すための講演を行った。講演のなかで彼は、国家が平和であるためには、まず、個々人が平和であることが必要だと強調し、超越瞑想がその手段となると述べた。

この会議は、ケニアのテレビ局によって生中継され、ケニア国内や世界各地に住む600万人以上のケニア人によって視聴された。以下は、そのシサノ元大統領の講演の抄訳である。

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「今日、こうして皆さんと共にいることを、光栄に感じます。私はこれまで、ケニアの平和を維持するための手助けをしてきましたが、こうして国の内外で平和を促進する努力が続けられていることを大変嬉しく思います。

私たちは、互いに結束することで、平和を生み出すことができるということを知っています。しかし、このようは方法は、私たち一人一人が自分自身の内に、平和をもたない限り、有効ではありません。

私たちは、まず最初に、自分自身の内側に平和をもつ必要があります。私たちは、自分が何であるかを深く知る必要があります。

私たちがどこから来て、どこへと向かっていくのかを探るための方法はたくさんありますが、瞑想は、自分自身を知るための一つの方法です。

毎日、いくらかの時間を瞑想に費やすことで、私たちは静寂を体験します。それによって、私たちが毎日作り出している緊張から抜け出して、自分自身でいることができます。私たちは緊張のなかで生きています。ストレスのなかで生きています。ですから、自分自身を見つけることができないのです。私たちは、周りで起こる外側の出来事で頭がいっぱいになって、自分自身のことを忘れてしまっています。

そのため、私たちは、深い瞑想を通して、自分自身を見つける必要があるのです。私は、超越瞑想を通して、それが得られることを知りました。超越瞑想は、非常に簡単な実習です。朝に20分、夕方に20分というわずかな時間行うだけです。瞑想中、皆さんは、静寂のなかで、自分自身と共にいることができます。何の努力もなしに、すべての緊張を追い払うことができます。日中にため込んだ煩わしい事柄をすべて追い払うことができます。そのとき、みなさんは、自分自身をよい状態に保つことができ、次に他の人々を気遣うことができるようになります。

皆さんは、まず最初に、自分自身のことを気遣います。そして次に、他の人を気遣うのです。瞑想は、あなたと他の人々との人間関係に平和をもたらし、さらにコミュニティでの人間関係や国家における人間関係に平和をもたらします。こうした瞑想法を行うことで、皆さんは新たな世界を生み出すことに貢献できるのです。なぜなら、瞑想は、自分自身のストレスを取り除くことができるからです。そして次に、あなたと他の人との人間関係のストレスをも取り除くでしょう。コミュニティや国家における人間関係のストレスをも取り除きます。このようにして、瞑想の影響は拡がっていくのです。

これが私が超越瞑想から学んだことです。この瞑想法の指導を受けたとき、私はそのように感じました。超越瞑想を続けることで、皆さんはより多くの恩恵を積み重ねていくことになるでしょう。その恩恵を皆さんは、自国の人々と共有することができるのです。」

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