女性向けの情報サイト「POPSUGAR」の編集者、ハンナ・ウェール・マッキンレーさんは、学生の頃に父親からもらった贈り物が、その後、人生を支えていると、ブログで書いている。その贈り物とは、「超越瞑想」だった。
以下の記事は、そのブログの抄訳。
◆ ◆ ◆
Contents
父からの贈り物 — 瞑想は「秘密兵器」
大学の寮に静寂はない。ドアをバタンッと閉める音が響いてくるし、酒に酔った学生が深夜の夜食を探して徘徊するし、隣室で繰り返されるアリシャ・キーズの曲は私の寛容精神の限界を試していた。
私は机の前に座って、目を大きく見開いて苛立ちながら、期末試験を前に私の英語論文の最初のページを何度も読み直していた。これじゃダメだわ…と思った私は、コンピュータの電源を切り、ドアを施錠して、寝台の下の段に潜り込んだ。
両手を膝の上で組んで、時計をちらりと見てから、目を静かに閉じ、瞑想を始めた。15分後、頭の中がはっきりしてきた。騒音は止まらなかったけれど、フラストレーションは減少した。
それから数年経った今ならわかる。私の父は、まさにそうやって私が瞑想を──秘密兵器として──利用するのを予見していたのだ。
父は大学院生から超越瞑想を始め、弁護士として成功
父は法科大学院に在学中、TM(超越瞑想)と出会った。60年代後半から70年代前半にかけて多くの若者がそうしたように、彼も瞑想のグループや修養会に参加していた。そのころ父はヒッピーと呼ばれていたかもしれないが、その「流行」の数十年後、彼は弁護士として成功している。
私が憶えているかぎり、そして、私が瞑想とは何かを知るずっと前から、父は少なくとも一日に一回は瞑想していた。
私の子供時代の大部分、それは謎であった。父は家に帰ると20分くらい書斎に閉じこもっていた。セールスの電話や父の友人からの電話に私が出て、父を呼び出してほしいと頼まれたとき、私はおせっかいにも、父が何をやっているか全然わかっていないのに、「お父さんは瞑想しています」と答えたものだった(たぶん「お父さんはいま忙しいです」とだけ言えばよかったのだ)。
私には、父がただイスに座って眠っているようにしか見えなかった。それが居眠りとどう違うのか、私が瞑想を始めるまでは、理解することができなかった。
瞑想は人生で頼りになる「ツール」
私が高校3年生になると、父は私にTMを習わせた。私の姉はすでにその前の年、卒業前にTMを習っていたし、私の兄はその数年前、高校3年のときに習っていた。それは父からの贈り物であり、彼は私たちの皆が大学に進む前にそれを習わせてあげるといつも言っていたのだ。それは私たちのその後の人生で頼りになるすごい「ツール」なのだと彼は保証していた。
私はそれを疑わしく思い、どうせならすぐに利用できるツールがいいな、たとえば車だったらいいのにな、と考えていた。それでも私はTM教師との最初のセッションを受けに行った。その人は、私に私だけのマントラを与え、瞑想するための簡単なやり方を教えてくれた。私は背を伸ばして座り、手を握り、目を閉じ、瞑想を始めた。
すると、私はたちまち落ち着いた気分になり、私の呼吸と思考のプロセスが変わり、私の頭の周囲の空間が実際に物理的に変化したように思えた。そんなふうに言うと、ばかげたことのように聞こえるかもしれないが、実際そうだったのだ。
私は15分間しか瞑想しなかったが、深くて満たされた眠りから目覚めたときのような感じだった。それは意識が朦朧(もうろう)とするような感じとは違う。想像してもらえるかどうかわからないが。
瞑想は最も効果的なストレス解消法
私はほぼ13年間それを続けているが、座って瞑想するたびに、ほとんど常にそういう感じになる。といっても、本当のことを言うと、毎日瞑想したわけではなく、やりたくなったときやった、という程度だった。
時には、瞑想するよりも、眠ったり、テレビを見たり、スポーツジムのソウルサイクル(前進しない自転車)で一汗かきたくなることがある。
でも、瞑想は、それらのことにはできない何かを、私の身体のためにしてくれている。そして、インターネットとか、オプラとか、アイフォンのアプリとかが瞑想の健康面の効果を大々的に宣伝し始める前に、私の父は単純な真実を知っていた。それは、瞑想は自分の身体が体験できる最も効果的なストレス解消であるということだ。
ストレスの軽減
それはかなりすごいことだ。なぜなら、高血圧、不安症、うつ病、コルチゾールの過剰分泌、心臓発作や脳卒中のリスクの増大といった健康問題はすべて、ストレスレベルの上昇に関連しているからだ。瞑想が万能薬だと言うつもりはないが、その効果は無視しがたいものがある。
1. 老化過程の進行を遅らせる
私の両親は二人とも60代後半だが、外見からは決してそうには見えない。父はこの20年間、ほとんど歳を取っていないように見える。遺伝子のせい? そうかもしれないが、瞑想によるところが大きいと思う。TMを実践している人々は暦年齢よりも生物学的年齢の方が若いことを示す研究結果がある。
84人を対象にしたある調査では、平均して2.9年間TMを続けている人たちは生物学的な年齢が歴年齢よりも5歳若く、平均して7.1年間瞑想を続けている長期の瞑想者たちは生物学的な年齢が歴年齢よりも12年若いということが明らかになりました。
2. 心臓発作と脳卒中の発症率を減らす
TMを実践すれば、血圧が下がり、心臓発作と脳卒中のリスクが48%減少するという研究結果もある。喜ばしいことに、私の両親はどちらも心臓に関わる健康問題には無縁である。実際、ごく些細な2、3の問題だけを除いて、両親は二人とも素晴らしく健康であり、それだけに私には瞑想の効果がより現実的なものとして感じられる。
心血管疾患と診断された患者を対象としたこの無作為化対照試験では、TMを学ぶグループに無作為に割り振られた被験者は、健康講習のプログラムを受講した対照グループと比較して、5〜9年の追跡調査の期間中、死亡、心臓発作、脳卒中の危険性が43%低いことが分かりました。
後に行われた分析では、TMをほぼ規則的に実践した被験者は、対照グループと比較して、死亡、心臓発作、脳卒中の危険性が61%低いことが分かりました。
3. 不安を和らげ、身体を安定させ大きな効果をもたらす
なかなか落ちない体重に悩んでいる人には、有酸素運動は必ずしも解決法にはならない。コルチゾールのようなストレスホルモンがその原因なのかもしれないが、瞑想は不安を和らげ、身体を安定させるので、身体面でも大きな効果を発揮する。瞑想は私たちの心に大きな影響を与え、その結果として、私たちの身体にもきわめて実際的な影響をもたらす。
超越瞑想を実践している人々は、自律神経系の安定性が増大していることが分かりました。自律神経系の安定性の増大は、自発性皮膚抵抗の揺らぎの頻度が小さい(揺らぎと揺らぎの間の時間間隔が長い)ことによって示されました。
さらに付け加えるとすれば、瞑想は神経系を改善し、痛みの緩和を助け、生産性を向上させ、人間関係を改善させる。これらすべての効果は研究により裏付けられている。しかし、私が瞑想を信頼しているのは、研究で効果が証明されているからではない。私が瞑想を習ったのは自分の意志ではなかったかもしれないが、瞑想を続けてきたのは自分の意志だった。
私は大学時代に、初めて自分の意志で瞑想することを決意した。期末試験で頭が混乱したとき、友人と喧嘩して憂鬱になったとき、卒業して新しい生活が始まることへの不安を感じたとき、私は何度もその決意を新たにした。瞑想のために座るときに私はいつも、なにかちょっとした点について、自分に癒しを与えようと心に決めてから瞑想を始めたものだった。
5年前、母が乳ガンと診断されたとき、彼女は宗教のこだわりを捨てて瞑想を始め、その穏やかな回復をもたらす方法によって健康を取り戻していった。その様子を見守っていた私は、瞑想は自己治癒ための最高の方法なのだと思うようになった。
現在、私が瞑想に頼るのは、毎月起こる生理痛の激痛が医師の治療では治まらないときや、ホームシックになったり孤独を感じたりするとき、狂気じみた多忙な仕事やそれと同じくらい忙しい家事のスケジュールに圧倒されているときだ。目を閉じ、自分のマントラを使い、15分間瞑想を続けると、頭がはっきりして、安らぎが訪れる。瞑想がこの上なく素晴らしい贈り物だというのは本当のことだったのだ。
Source:“Why Meditation Is the Best Gift My Dad Gave Me” by HANNAH WEIL MCKINLEY, POPSUGAR.