HIV/エイズ感染者が瞑想によって免疫力を高め、ストレスを軽減

トム・ロスは、2012年にTM-HIVプロジェクトを立ち上げた人物だ。彼は今後3年間で全米の1万人のHIV感染者にTM(超越瞑想)を提供することを目標にしている。

トム・ロス

デヴィッド・リンチ財団のボブ・ロス理事長の弟であるトム自身も40年にわたり瞑想を実践し、指導してきた。彼は、今、HIV感染者とAIDS患者を支援する同財団の活動に重大な変化が起ころうとしているという確信をもっている。

「自分がHIVに感染していると知ったらどれほど衝撃を受けるか、想像してみてください」とトム・ロスは語る。「ストレスと恐怖にさいなまれ、それはすぐに患者の免疫系に悪影響を与えるでしょう。ですから、その悪循環を断ち切るために、患者に安らぎをもたらすような何かが必要なのです。」

誰でも無理なくできて、十分に研究されたストレス解消法として知られるTM(超越瞑想)は、そのような悪循環を逆転させるかもしれない。

◆TMを試したHIV感染者

「私は、他のホームレスの人たちと一緒にキャンプにいたとき、橋の下に座って超越瞑想を行いました。そうしているうちに、はっきり浮かんできたのは、私は何かに段階的に取り組んで今の状態よりも丈夫になるための特別な努力を始めるべきだ、という想いでした。

TMは、心をリラックスさせ、身体の働きを自然に調和させ、免疫系の闘う力を取り戻すための訓練です。300にまで下がり続けた私のT細胞数は今では1200に戻っています。」──マイケル・ルーペット

「私がTMの実践を始めてから1年になります。前は杖を使って歩いていましたが、もう必要なくなりました。私の生活は混乱していましたが、ストレスは少しずつ消えていきました。私は快活な自分に戻りつつあります!」──ノーマ・アズカル

「私はHIVにストレスを感じながら生きてきましたが、約3年前、とうとう日常生活に支障をきたす事態に至りました。毎日のように頭痛があり、胸に痛みを感じ、私のT細胞数はゆっくり着実に下がっていました。

トムのプロジェクトのことは耳にしてましたが、少し疑わしいものだと考えていました。ですが、それを試してみようと思ったのです。なぜなら、私に失うものはないのですから…。TMを学んでから3週間のうちに頭痛がなくなり、疲労感が消えていきました。1カ月後、主治医にT細胞数を測定してもらうと約15%上がっていました。それは異常なことだと私たちは驚きました。

そして18カ月が経ちました。頭痛はなく、T細胞数は上がったままであり、痛みは消え、幸せを感じています。私の生活で起こったただ一つの変化は、1日に2回、20分座って瞑想をする時間を捻出するための努力を心がけていることです。TMは素晴らしいものですが、特にHIVととも生きる人々にとって、それは天の恵みなのです。」──ラリー・ザパトカ

◆TMは、患者の心身の健康を改善する

『AIDS Care』誌(Taylor&Francis)に掲載された先駆的な無作為化比較研究は、HIVに感染している患者を瞑想をしているグループと瞑想をしていないグループに分けて、2つのグループの比較を行った。

この研究の結果、生活の質にかかわるいくつかの要因の改善に超越瞑想が役立っていることが分かった。研究チームを主導したスメーダ・チャトレー(PhD:ペンシルバニア大学ペレルマン医学大学院の医療サービス研究員)によると、瞑想をしているグループの患者は、身体的および社会的に活発に活動する能力、痛みの程度、一般的な心の健康などの領域で有意な改善を示した。

「これは地域社会で暮らす成人HIV感染者がTMを利用した結果を調査した初めての研究ですが、ストレスとその結果との関連性に関して、既存の証拠に新たなものを加える成果を上げることができました。」とチャトレーは語る。

新しい視点が生まれるときは常にそうであるように、詳細まで明確にするためにはさらなる科学的調査が必要になる。現在のところ、多くの重要な指標──例えば、瞑想をしているHIV感染者のT細胞数──に改善が見られている。

デヴィッド・リンチ財団のトム・ロスが率いているTM-HIVイニシアチブは一つのことを確信している。事実に基づいて眺めれば、HIVを超越する時期がすでに始まろうとしている、ということである。

デヴィッド・リンチ財団がサンフランシスコで行っているTM-HIVプロジェクトについての動画(英語)

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