米国ABCニュースキャスターのエリザベス・バルガスさんは、誰からみても典型的な成功者だ。エミー賞の受賞経歴をもち、世界を飛び回るレポーターの彼女を人々はテレビで目にしてきた。
しかしその舞台裏では、不安に起因するアルコール依存症との厳しい戦いを行っていた。そして2013年、その闘いを公表し、問題を隠そうとして心身を消耗させることから自分を解き放った。また、その勇敢な行為によって、アルコール依存症の女性に対する汚名を取り除き、その課題にスポットライトを当てることになる。
2016年9月に、バルガスさんは自著「Between Breaths: A Memoir of Panic and Addiction(呼吸の合間に:アルコール依存症とパニック症の体験記)」を出版した。その中で、彼女は6才のときに父親がベトナム戦争に出兵したときから不安障害が始まっていたと記している。しかし医師の診断や治療を受けることはなかった。大人になって自力で治そうと試みたが、そこから抜け出そうとしても、すぐに逆戻りする日々を繰り返していたという。そうしたなかで、ついに飲酒から逃れるための正しい方法と日課を見つけることになる。
パニックを静めた内省的休息
彼女が見つけた健康を取り戻すための方法の一つがTMと呼ばれる超越瞑想だった。彼女にこの瞑想法を紹介したのは、同僚のABCキャスター、ジョージ・ステファノポロスであり、それ以来、TMは彼女の回復にとって不可欠なものとなっている。
「不安をもつ人々は、物事に過敏に反応する傾向があります。ウサギのように走り出し、周りで起こる出来事に過敏に反応してしまうのです。出来事が起こっている間中ずっとです。」と「不安症とアルコール依存症との戦い」の記事の中で述べている。
TMの実践を彼女は「内省的な休息」と呼び、「超越瞑想が活動のペースをおとす助けとなる」とナショナルサミット「National Summit: Recovery, Meditation, the Brain(回復、瞑想、脳)」の中で話した。
恐怖は、実際それほど怖くない
「ペースを落として、物事をはっきり考えることができれば、パニックを静めることができるだけでなく、自分が恐れているものは、実際にはそれほど怖くないと理解できるんです。」
「その恐れが何であれ、私たちは、それにとらわれない状態を学ぼうとしています。恐れを手放すためにです。そんなに怖がる必要があるの? この恐怖は本当に存在するの? とその恐れを少しだけ脇においてみるのです。」
「瞑想は自分の思考や感情と共にいて、それらを観察することを教えてくれました。脳の電源を切ったり、思考を停止することはできませんが、瞑想中は、それらにあまり関わらないでいられるのです。」
「例えば、自分の考えが、紐のついた風船のようにゆっくり浮かんでいくとします。それらを見ていますが、その紐をつかんで風船を自分の方に引っ張ってはいけません。それに執着せずに、ただありのままでいるのです。」
治療に必要なのは不安の緩和
こうしたバルガスさんの体験は、超越瞑想がストレスや不安を和らげ、依存症と戦う効果的なツールであることを示す多くの研究結果と一致している。アルコール依存症の女性の約63%が不安症に苦しんでおり、不安を抱えている人の依存症の再発率は2倍だといわれている。そう考えると不安の緩和は依存症治療の優先事項の一つと言えるだろう。
TMの実践は、パニックに陥ったときに自分の思考にとらわれないように心を訓練するようなものだと彼女は考えている。だからこそ、1日2回、あるいは2回が無理なら1回だけでもTMを行うように努めている、という。
「実際には、1度しか瞑想できない日がほとんどですが、それだけでも信じられないほど貴重なものです。」と彼女は締めくくった。
ソース:
Elizabeth Vargas on beating alcohol addiction with the help of TM