救急救命士を目指す学生たちを支える「心の深い休息」──超越瞑想の可能性

救急救命士を目指す学生たちは、学業の忙しさに加え、実習や現場を想定した訓練を通して、強い心理的プレッシャーにさらされています。命に関わる判断を学ぶ過程は、大きなやりがいがある一方で、慢性的なストレスや不安、疲労を生みやすい環境でもあります。実際、救急医療に関わる人々は、一般人口と比べて、うつやPTSDのリスクが高いことがこれまでの研究でも指摘されてきました。

こうした背景の中で、2025年に「Scientific Reports」に掲載された一つの研究が注目を集めています。テーマは「超越瞑想が、救急救命学科の学生のメンタルヘルスとレジリエンスにどのような影響を与えるのか」というものです。

科学的に検証された「瞑想」

この研究は、規模こそ小さいものの、ランダム化比較試験という厳密な方法で行われました。救急救命学科に在籍する学生10名が参加し、半数は通常の学生生活を続ける対照群、もう半数は4週間にわたって超越瞑想を実践するグループに割り当てられました。

瞑想を行った学生たちは、朝と夕方にそれぞれ20分、静かに目を閉じて内側に意識を向ける時間を持ちました。その前後で、ストレス、抑うつ感、疲労、精神的な明瞭さ、レジリエンスといった指標が評価され、両グループの変化が比較されました。

短期間でも現れた心の変化

結果は印象的でした。超越瞑想を実践した学生たちは、対照群と比べてストレスやうつ症状が低下し、疲労感も軽減していました。それだけでなく、物事を落ち着いて捉える感覚や、困難な状況に直面してもそこから回復する能力(レジリエンス)が高まったことが示されました。

特筆すべきは、これらの変化がわずか4週間という短期間で現れた点です。研究者たちは、効果の大きさも比較的高かったと報告しており、超越瞑想が単なる気分転換以上の影響を持つ可能性を示唆しています。

数値だけでは見えない参加者の実感

統計的な結果だけでなく、参加者の主観的な体験が、この研究の意味をより鮮明にしています。瞑想を行った学生からは、集中力が高まり学習がスムーズになったことや、日常的に感じていた不安や緊張が和らいだという感想が寄せられました。中には、睡眠の質が向上したと感じた学生もおり、心身の回復感が日常生活にまで波及していたことがうかがえます。

忙しく、常に緊張を強いられる日々の中で、内側に静けさを取り戻す時間が、学生たちにとって大きな意味を持っていたのかもしれません。

小規模研究だからこそ見える可能性

もちろん、この研究には限界があります。参加者数は少なく、観察期間も短いため、結果をそのまま一般化することはできません。研究者自身も、今後はより大規模で長期的な研究が必要であると慎重に述べています。

それでも、この研究が示した方向性は重要です。医療や救急の分野では、心のケアは後回しにされがちですが、精神的な余裕が失われれば、学習の質や将来の現場での判断力にも影響を及ぼします。

静けさを育てるという選択肢

今回の研究は、薬や特別な設備に頼らず、誰もが自分の内側で実践できる方法が、専門職を目指す学生たちの心を支える可能性を持つことを示しています。静かに目を閉じ、意識を内側に向ける──そのシンプルな行為が、過酷な環境に身を置く人々にとって、確かな支えとなり得ることを、科学の言葉で伝えているのです。

ソース:Evaluating the effectiveness of Transcendental Meditation on mental health and resilience of paramedicine students – a randomised controlled pilot study

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