衝撃的な統計結果がある。米国では、毎日18人の退役軍人が自殺しており、しかもその三分の一は、退役軍人局の支援のもとで治療を受けている人々であった。退役軍人局は軍人達への支援を増やす対策を行っているが、それにも関わらず自殺率は過去最高のレベルにまで増え続けている。
超越瞑想は、助けになるのか?
その一方で、デヴィッド・リンチ財団のオペレーション・ウォリアー・ウェルネス計画の一環として超越瞑想を学んだ米国の海兵隊員たちの報告は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しむ人びとの命を救う方法があることを示唆している。
その一人であるジェイムズ・スラッシャー軍曹は、超越瞑想によってPTSDの苦痛から解放された。※以下はインタビュービデオからの抜粋
「私は毎日、苦痛と戦ってきました。足に神経の問題があるのと、医師からPTSDだと診断され、職務は遂行不可能となりました。睡眠不足や道徳的価値観の低下で、うまく仕事ができず、何もできなくなり、周りの人にイライラをぶつけるようになりました。頭の中は戦地の記憶でいっぱいで、毎日それを思い出すのです。同じ悲惨な記憶を繰り返し繰り返し、思い出すのです。
私は超越瞑想(TM)に興味をもちましたが、同時に懐疑的でもありました。しかし、TMの効果はすぐに現れて、本当に驚きました。瞑想すると内側に安らぎを感じて、元気がでてくるのです。そして、これまで苦しんできた事柄をうまく扱えるようになりました。小さなことに動揺しなくなり、怒り、欲求不満、不眠症、アルコール中毒、麻薬依存から解放されました。それは私にとって、非常に大きな効果です。」
「軍隊では、トラウマにどう対処したらよいか教えていません。人の死に直面したとき、それにどう対処したらよいか教えていません。しかし、どんな状況の中でも、瞑想すれば、心は落ち着いて、戦場においても、日々の生活においても、もっと効果的に行動できるようになります。瞑想はそれを内側から訓練します。」
海兵隊のリチャード・ウィルソンは、超越瞑想が心の平安を取り戻すのに助けになっていると報告する。
「私は、これまでに8回、戦地に配置され、4回、戦闘に参加しました。私はPTSD、鬱病、不眠症と診断されています。私たち軍人は、どんな問題に直面しても、それと戦い、愚痴を言わずに我慢しなければなりません。私は、長年にわたって、それを行ってきました。私が体験したトラウマ、私が体験してきた状況を、すべて自分の内にためこんで、問題で一杯にし続けてきました。そうした問題を解決することなしにです。
TMをすると、心がより多くのものにひらかれるので、よりよい判断ができ、人間関係や、あらゆる面で、バランスのとれた行動をとることができるようになりました。TMを行っている間は、深いリラクゼーションを感じます。そして、以前のように、常に周りを警戒したり、周りの出来事に動揺することがなくなりました。瞑想は、心の平安と幸福を見いだす助けになっています。私の家族、友達、同僚たちは、私の性格に大きな変化が起こったことに気づきました。私はもっと幸せになり、気持ちが楽になり、健康になりました。」
負傷した軍人を助ける相談役のポール・スワンソン中佐は、超越瞑想の実践は、本当の自分に気づかせることで周囲の雑音を鎮めていると述べている。
「瞑想、特に超越瞑想は、心に傷を負った軍人を助ける効果があると思います。なぜなら、人生の表現的な領域で何が起こったとしても、瞑想は、そうしたすべての雑音、すべての嵐を鎮めることができるからです。瞑想によって、心の安らぎを感じますが、それは私たちの内にある、本当の自分自身を見つけることにつながります。それが、瞑想によって私たちが得るものです。」
臨床心理学者のアンナ・ベンソン博士は、超越瞑想が戦場の兵士がPTSDに陥らないように予防するのではないかと話す。
「TMに関して興味をもったのは、これまでの研究から、TMがPTSDに驚くほど効果があることが示されていたからです。戦闘によるストレスやトラウマは、実際に脳を変化させ、自己制御能力を低下させることがわかっていますが、瞑想すれば、そうした脳の自己制御能力を回復できるということです。それは、兵士達が自分で行うことのできる素晴らしいテクニックです。軍当局は現在、兵士達の回復力を高めることに、大きな関心を寄せています。そして、これまでの研究が示していることは、兵士達を戦場に派遣する前に、超越瞑想という回復力を高めるテクニックを与えることで、PTSDを未然に予防できるということです」
■越瞑想を学んだ兵士達のインタビュー