米国航空宇宙局(NASA)と医学研究所のあるテキサス州ヒューストンで、1972年10月20日に2900人がジョーンズ・ホールに集まり、創造的知性の科学の創始者であるマハリシ・マヘーシュ・ヨーギーの講演を聞いた。マハリシは、超越瞑想によって「枠のない意識」を経験することが、すべての行動を成功させる鍵であると話した。以下は、その講演の一部である。
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マハリシ:心の自然な傾向とは、より大きな幸福の領域へと向かうということです。心のすべての流れは、より大きな幸福、より大きな幸福へと向かって進みます。そして、内深くにある想念の源は枠のない意識であり、その枠のない意識の本質は至福です。
この至福意識は、すべての活動の流れのゴールであり、すべての活動の経路のゴールです。人がどこに行こうと、何をしようと、それは常により大きな幸福へと向かっているのです。進歩とは、もっともっとの方向へ、より大きな幸福へと向かっていくことです。そして、内深くにある想念の源には、枠のない至福意識があります。ですから、心は自動的に、その方向へと向かっていくのです。そのために練習は必要ありません。
超越瞑想は、全く努力が必要ありません。それは、成功する方向へと向かうための練習ではありません。より大きな幸福の方向へと動く心の自然な傾向は、自動的に、完全に、努力なく、心をその方向へと向け、枠のない意識状態を与えます。その理由は、生命の自然な傾向とは、もっともっとの方向へと進歩することだからです。そして、この枠のない状態は、最も大きなものよりも大きなものです。意識をこの枠のない領域へと導く自然なテクニックによって、枠のない状態をうまく維持できるようになります。そのために、実習が必要なのです。
そのゴールへと至るために実習は必要ありませんが、そのゴールを超越の領域から活動の領域へと引き出すためには実習が必要です。そのような理由で、私たちは朝と夕方に瞑想し、それから活動します。そして再び、朝と夕方に超越の体験を繰り返し、再び活動の体験を繰り返します。活動と瞑想を繰り返す、そのような実習が、枠のない意識状態を永遠に確立します。そのときには、どのような行動をしていても、枠のない状態が永遠に維持されます。今こそ、すべての人がこの知識と共に、そのような生命の状態を生きるべきです。
米国ヒューストンのジョーンズホールに集まった聴衆1972年
そのような成功した人々を、建築家を例にあげて説明しましょう。建築家が机に座るとき、彼の心は、非常に多くの異なる事柄を考慮する必要があります。市場でどのような資材が手に入るか、敷地はどのようか、建物の背景は丘なのか平らなのかを考慮して、構造を築く必要があります。風圧はどれくらいか、地震が起きたらどれくらい衝撃があり、どれくらい強力な建物を建てるべきか、無数の側面を考慮しなければなりません。それらすべてを考慮して、非常に多くの異なる価値を包括するとき、彼は嬉しげに言います。「このような構造にすべきだ。このように、このように」と言います。
心が落ち着いて、集中した状態、そのような包括的な心の状態は、非常に多くの側面すべてを一つにまとめ、それらすべての側面を調和させることができます。これら様々な側面すべてが一緒になって、一つの素晴らしいプロジェクトが構築されるのです。しかし、もし彼の心がすべての事柄を包括できないと、彼は、ここそこで何か素晴らしいものを作りますが、あるところでは素晴らしさを見失ってしまうでしょう。
生命は、無数の多様性で構成されています。すべての人は、非常に多くの活動の領域をもっています。多くの愛する人、多くの幸福の領域があります。人間関係は無数にあります。それらすべての領域が、最高のものであるべきです。しかし、それは、すべての領域について考えたり、計画することで、できることではありません。そうではなく、すべてに精通する意識を養うことが大切です。それは、限界を知らない、あの枠のない意識を養うことです。枠のない意識があれば、何に注意を向けたとしても、その一点に、鋭く集中することができます。
これが、これまで欠けてきた知識です。それは、生命の基盤に関する知識であり、いかにして私たちの内側にある、すべての活動の基盤を扱うかという知識です。すべての行動や想念の基盤にあるものが、私たちの視界から隠されてきました。しかし、超越瞑想という自然な方法によって、私たちの意識を生命の基盤へと開くことで、私たちのすべての願いや活動は実りあるものとなります。そのために、朝と夕方、15分~20分の時間を費やすことは、十分に価値あることです。──マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー