悟りを開くとは? 老子、ブッダ、エマソン、ルーミーなど聖人・偉人に共通する最高の体験

世界中の偉人や聖人たちに起こった「最高の目覚め(真実を瞬間的に垣間見る体験)」を科学的な視点から解説するクレッグ・ピアソン博士(マハリシ国際大学の副学長)のインタビュー記事が『ハフィントン・ポスト』のブログに掲載された。以下はその記事の抄訳だ。

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「人は、人間の限界、不完全さ、自分自身のアイデンティティから解放されたと感じる瞬間があります。…生と死が一つに流れ込み、進化も運命もなく、ただ存在しているだけという瞬間です。──アルバート・アインシュタイン」

真実と呼ばれるものの真の本質を体験すること、それがあらゆる文化の中で常に探求されてきたテーマです。世界中の偉人や聖人たちの中には、真実を瞬間的に垣間見たり、その状態を常に生きていた人たちがいました。

そのような意識が高まった瞬間を、心理学では「至高体験」と呼んでいます。それは人生を変える「目覚め」の体験であり、哲学や宗教の聖典、最も優れた科学者の著書の中に、そうした体験の記録が数多く残されています。それらの体験は、完全な人間とは何なのかを明らかにし、人間の可能性に対する、より深い理解を与えてくれます。

そこで、こうしたテーマに関して「最高の目覚め」の著者であるクレッグ・ピアソン博士にインタビューを行いました。クレッグ・ピアソン博士は、マハリシ国際大学の副学長であり、瞑想と意識の学習を含む教育制度を開発してきました。博士は長年にわたって世界中の偉人や聖人たちの「目覚めの体験」の記録を集めて、それらを科学的な視点から解き明かそうとしています。

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──「最高の目覚め」とは、どのような状態ですか?

ピアソン博士:古典的な文献において、「最高の目覚め」は悟りと呼ばれます。それは肯定的な態度をとったり、「今を生きる」以上のものです。悟りを開くとは、脳機能が最大にまで高まることで、自分の内面や、外側の世界に対する認識が劇的に変化することです。

伝統的な悟りに関する教えによると、悟りとは、私たちの内側にもともと備わっている無限の力・静けさ・自由・至福の海に目覚めること、私たちの最も奥深い「自己」に目覚めることです。

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──人類の歴史の中で「より高い意識」を体験した人たちがいるということですが、それはどのような人たちですか。

ピアソン博士:例えば、老子、ブッダ、キリスト、シャンカラ、ルーミーなど、高い精神性を備えた人たちや、プラトンやプロティノスなどの哲学者、アウグスティヌスやアビラのテレサのような聖人が、「より高い意識」を体験していました。他にも、エミリー・ブロントエ、ヘンリー・ミラー、D.H.ローレンスといった文学界の偉人や、ビリー・ジーン・キング、ロジャー・バニスター、ペレなどのスポーツ選手、エマーソン、ブラック・エルク、ヘレン・ケラー、ヴァクラヴ・ハベルなど伝説的な人物、そして現代の例としてはエックハルト・トールがいます。

──そのような人たちの「至高体験」、つまり「目覚める体験」には、何か共通点はありますか?

ピアソン博士:一つの共通点として、彼らはこれらの体験を人生で最も重要で、価値のある体験として賞賛していることです。イギリスの作家エドワード・カーペンターが述べていたように、「それが一度でも、その人にやってくると、その後の人生と世界観に完全な革命をもたらす」のです。

もう一つの共通点は、彼らが生きていた時代、場所、文化は異なっていても、その体験を驚くほど似たような言葉で表現していることです。静寂、平和、至福、無限、永遠、明瞭さ、自由、統一、全体性といった言葉で表現しています。それは、アーサー・ケストラーが述べているように、「物事の真の現実、隠れた秩序」に触れる感覚です。その体験はたぐいまれなものですが、多くの人がそれをまったく自然な体験だと話していて、「家に帰ってきた」ように感じる人もいます。

──脳がどのように機能することで、こうした意識の目覚めが起こるのでしょうか?

ピアソン博士:最近の神経科学の発展と、超越瞑想(略してTM)の実践者の脳波を測定した研究から、意識が目覚めるにつれて、脳の機能がますます統合され、調和したものになることがわかっています。例えば、オーケストラのメンバーが、音の高さを合わせようとしている状態から、美しい和音を奏でる状態へと移っていく様子を想像してみてください。これは、TMの実践者の脳で起こることと似ています。TM中には、脳の離れた領域間のコミュニケーションや調和が高まることが明らかになっています。

MRI

──それでは、悟りへの成長は科学的に測定可能なのですか?

ピアソン博士:はい。それは非常に興味深い、科学の最先端の領域です。悟りへの成長は、脳機能の向上だけでなく、認知力の発達、精神的および肉体的健康の改善人格の成長自己実現の成長という観点から測定することができます。

──文学の中で、「より高い意識」の体験が表現されているところを挙げていただけますか?

ピアソン博士:私の好きなウィリアム・ワーズワースの一文をご紹介しましょう。

「……あの恵まれた気分に浸っていれば、解き得ぬ謎も、この不可解な世の中の重苦しい、わずらわしい重圧さえも軽減される。 そのような安らいだ気分の中で、この体の息づかいも、私たち人間の血液の流れすらも、ほとんど停止するのだ。体は眠っているが、一つの生きた魂となり、調和の力と歓喜の深い力によって、静まった眼で私たちは全てのものの神髄を見通すのだ。……」

「より高い意識」の体験に伴う生理学的変化を、彼がいかに正確に表現しているかに注目してください。「より高い意識」を体験しているとき、体は深く安らいでいて、呼吸が「ほとんど停止」します。それでも彼は眠っていません。これまで以上に広く目覚めています。これは、深く安らいでいながらも意識がはっきりと目覚めている状態です。TMテクニックの実践中には、こうした新陳代謝の低下が起こることが科学的に計測されています。

そうした体験を、アメリカの作家ヘンリー・ソローは、「最も純粋な水晶の湖のようになる瞬間」と記述しています。イギリスの詩人アルフレッド・テニスンは、「心の絶対的な明晰さと関わりをもつ、超越的で不可思議な状態」と表現しています。アメリカの詩人エミリー・ディキンソンは、「不死不滅の巨大な実体を体験したと書いています。

スペインの聖テレサは、「内側で幸福に満ちた平安と静けさを体験し、そこには何も欠けているものはない」と語っています。アメリカの作家トーマス・マートンは、「私たちの魂は突然、私たちを新しいレベルの意識に目覚めさせ、それと比較すると、普通の目覚めた生活は、睡眠のように見える」と書いていました。

規則的に超越瞑想を実践している人は、こうした体験に共感することがよくあります。

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──現代では、悟りをどのように説明できますか? なぜ人々は悟りを望んでいるのでしょうか?

ピアソン博士:悟りへの成長は、私たちが望むあらゆる肯定的な質をもたらすからです。悟りが成長するとともに、幸福や思いやりが増し、創造性や知性が向上し、健康が改善され、生活のバランスが整い、人格が発達し、人間関係が改善され、外側の成功がもたらされます。

しかし、悟りはそれ以上のものです。至福や自由が成長するだけでなく、願望を実現する力や、より良い世界を生み出す力が得られるのです。

──あなたはマハリシ国際大学の副学長ですが、そこでは、どのように悟りを研究しているのですか?

ピアソン博士:この大学では、すべての学生、教職員、スタッフ、そして地域社会の何百人もの人々が、一緒に瞑想しています。

意識について明確に理解し、悟りへと向かってどのように成長していくのかを知ることで、学問的な知識を新たな観点からとらえることができ、教育はより意義深いものになります。

この大学の学生たちは、定期的に脳波測定を受けて、年に一度、脳の統合進捗報告書を受け取っています。神経科学の研究によると、脳波の同調が高まることで、知性、創造性、道徳的な成熟度が高まることがわかっています。

──瞑想は悟りを得るための唯一の方法ですか?

ピアソン博士:過去の歴史の中で、より高い意識を体験し、それを表現した人たちがいますが、彼らの多くは、瞑想のテクニックを持っていませんでした。そのため、彼らにとっても、こうした体験はめったに起こらない、つかの間の出来事だったのです。

今では、悟りの体験は、偶然に起こる出来事ではなくなりました。自分自身を探求する効果的なテクニック(自分の存在の最も深いレベルへと至り、日常生活の中でそれを定着させる方法)さえあれば、ワーズワースやエマソン、ブッダを感動させた喜びに満ちた体験を、誰でも得ることができるのです。

超越瞑想についてはこちら

ソース:The Supreme Awakening: What Did Buddha, Emerson, Einstein and Saint Teresa Have in Common?