薬を使わずに治療効果が期待される瞑想が注目されている。自閉症の子どもたちが超越瞑想を実践すると、集中力が増し、衝動的な行動の改善が示された。以下は、everydayhealth.comが報告した記事の抄訳。
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超越瞑想は、自閉症の子どもたちの集中力を増し、衝動的な行動を改善するという証拠が示されている。
自閉症スペクトル(以前は、アスペルガー症候群と呼ばれていた)障害の子どもをもつ親は、できれば薬を使わずに治療したい考えている。そうした親子にとって、超越瞑想は試してみる価値があるだろう。従来の治療法に加えて、1日2回、10分間ほどの超越瞑想(TM)を行うことで、自閉症の子どもたちがさまざまな状況にうまく対処できるようになることがわかってきた。症状の度合いは違っても、社会的なコミュニケーションや行動・態度に問題のある子どもにもTMは助けになるかもしれない。
自閉症の子どもたちのためのTM
疾病管理予防センターによると、88人に1人の子どもは、自閉症スペクトル障害(ASD)を抱えているという。いくつかの症状は薬で治療することができるが、多くの親は薬を使わない治療法を希望しているとキャサリーン・アングクスティスリ医師(カルフォルニア大学デーヴィス校MIND研究所の発達行動の小児科医)は述べている。
アングクスティスリ医師は、そうした自閉症の子どもをもつ親に、瞑想を含む代替療法を勧めている。カルフォルニア大学デーヴィス校MIND研究所で行われた調査によると、自閉症を抱える子どもたちは、他の発達障害の子どもたちよりも、補完・代替医療を利用すること多いという。
古代インドの伝統に由来する超越瞑想(TM)は、楽な姿勢で座り、目を閉じて、先生から学んだ音(マントラ)を静かに繰り返すテクニックだ。「TMによって、心と体は自動的に落ち着いていき、安らぎにみちた機敏な状態を体験する。」とボブ・ロス氏は語る。彼は、デヴィッド・リンチ財団の理事長であり長年の経験をもつTM教師である。
TMは、心を集中したり、コントロールする必要がないため、自閉症の子どもたちにぴったりのテクニックだと彼は話す。
「TMをすると、体は深く安らいでリラックスし、心も落ち着きますが、内側でははっきりと目覚めています。そうした深い休息は、自閉症スペクトル障害の子どもたちのストレスを取り除き、学習障害や行動障害を改善するのです。」
しかしながら、TMから最大の恩恵を得るためには2つの条件がある。一つは、TMのやり方を学ぶことができるのは、最低でも10才になってからだ。もう一つは、資格のある教師から個別の指導を受ける必要がある。「TMは大勢で学ぶ瞑想法ではなく、正式な資格をもつ教師から、マンツーマンの指導を受けて学びます。」とロス氏は説明する。
TMを学ぶときは、4日間にわたって、約1~2時間の指導を受けることになる。自閉症スペクトルの子どもでも、十分な年齢に達すれば、TMを学ぶことができるとロス氏はいう。自閉症の子どもは、発達障害のない子どもたちよりも、TMを学ぶのに長い時間がかかる場合もあるが、「TM自体は難しいものではなく、子どもたちがイライラすることはありません。」と彼はいう。「子どもたちは、TMをするとリラックスして、満足します。」
しかし、何歳で瞑想を学ぶのが一番よいのかについては、人によって意見が異なっている。2012年に「自閉症の研究と治療」に掲載された記事では、自閉症の子どもたちにとって、マントラを用いた瞑想法が最も効果的であり、3才から14才の子どもたちに適していると結論づけられていた。(訳注:TMにも4才から学べる知恵の言葉という子どもための瞑想がある。)
TMは補足的なものであり、医療に代わるものではない
超越瞑想は、自閉症の独立した治療法ではないとノーマン・ローゼンソール博士は述べている。彼は、ワシントンD.C.にあるジョージタウン医科大学精神科の臨床学教授であり、「トタンセンデンス:超越瞑想による癒やしと変容」の著者だ。「しかし、自閉症の子どもに役立つものを探している親にとっては、TMは試してみる価値があるだろう」と彼は話す。
TMは、自閉症の治療法として処方される薬や療法と一緒に行うと効果的なようだ。「子どもたちは、薬を必要としなくなるかもしれませんが、TMは医学的な療法ではないので、薬を減らすかどうかは医師と相談してください。」とロス氏も話している。
彼は、自閉症の子どもの親にも、超越瞑想を学ぶように勧めている。そうすれば、子どもと一緒に実習することができるからだ。
「親と子が一緒に瞑想するのは、素晴らしいことです。」
朝の10分、学校から帰ってきて夕食前に10分瞑想することで、子どもたちは感情的になったり衝動的になることが減り、幸福感が増し、集中力が高まる。子どもたちがTMを行うと、夜もよく眠れるようになるという。
「時には、子どもたちが快適に瞑想できるように、5分の瞑想から始めることもあります。」とロス氏は説明する。
研究調査が示していること
デヴィッド・リンチ財団のウェッブ・セミナー「自閉症、瞑想、ストレス(2013年11月)」で、ローゼンタール博士は、「現在のところ、自閉症に対する瞑想の効果を示す証拠は、個々人の報告や、観察に基づくものが多い」と話している。
現在、TMが自閉症スペクトル障害の子どもたちに役立つかどうかを調べる研究が続けられている。2011年の精神医学ジャーナル「心と脳」に掲載された小規模の研究によると、注意欠陥多動障害や他の学習障害の生徒が、6カ月間にわたって1日2回、各10分間のTMを行った結果、特定の症状に有意な改善が見られたと、生徒の親は報告した。また、アメリカ国立衛生研究所、米国医師会、アメリカ心理学会、ハーバード大学医学大学院を含む、多くの医療関係の研究者たちが、健康に対するTMの効果を研究している。
いずれにせよ、このテクニックを試してみることには何の危険性もない、とロス氏は述べている。「瞑想中に起こることは、体が休息をとってリラックスすることであり、そうした休息によって、体が害を受けることはありません。」ロス氏は、TM教師としての40年間の経験から、「肯定的な効果以外は見たことがない」と話した。
Source:This No-Cost, Drug-Free Therapy Helps Children With Autism (Beth W Orenstein )