1975年、超越瞑想の世界ツアーのなかでマハリシは、米国で人気のあるテレビ番組、マーヴ・グリフィンショーに出演した。番組放送後、超越瞑想を教えるTMセンターの前には、瞑想を学びたいという人たちの長蛇の列ができた。そのときのマハリシが出演した番組の模様をご紹介しよう。
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マハリシは、控え室でショーの司会者のマーヴ・グリフィンといっしょにいます。テレビの録画撮りがもうすぐ始まろうとしています。
三千万人の人たちが、このショーを視ると推定されています。マーヴ・グリフィンに実際に会ってみると、彼はテレビで視るとおりの気さくで親しみやすい人でした。視聴者たちは、彼のそうした人柄が気に入っています。彼の番組をテレビでよく視ている人たちにとっては、彼はなじみ深い、くつろげる人物であり、いわば茶の間の友人といったところです。
一方、マハリシ・マヘーシュ・ヨーギーを視るのは、この番組の視聴者たちの大部分にとっては、まったく初めてであると思われます。
さあ、準備は完了しました。客席のライトが消されて、舞台の幕が上がります。三千万人の人たちが、このショーにチャンネルを合わせています。
まず、マーヴ・グリフィンが舞台の上に進み出ます。彼はそこで振り向いて、テレビカメラを背にして、観客といっしょに拍手でショーのゲストを迎えます。長い髪と白いひげのゲストが舞台に登場します。ゲストは、白い絹の服を着ており、花を腕いっぱいに抱えています。彼の顔は大きく微笑んでいます。彼は観客の全体を見渡すように視線をゆっくりと動かして、目で歓迎の拍手に応えています。明らかに、ゲストであるマハリシ自身も、ショーを楽しんでいるようです。
スタジオに集まった観客の多くは、マハリシから直接、訓練を受けた超越瞑想プログラムの教師たちです。観客からの拍手が温かいのは、観客がマハリシのことをよく知っているからです。しかし、テレビを視ている人たちのほとんどは、マハリシのことをあまりよく知りません。おそらく、視聴者たちは、マーヴ・グリフィンがどうしてマハリシをゲストとして招いたのかと、疑問に思っているでしょう。この疑問は、次のように、すぐに答えが与えられます。
マーヴ・グリフィンは腰を下ろしながら言います。
「まず、みなさんにくつろいでもらおうと思います。今日のショーは、私自身もTMテクニック(超越瞑想)を行っているということから、始めることにしましょう。」
彼はイスにもたれて微笑みながら、拍手が鳴りやむのを待ちます。
「私は九日前に始めました。」彼は言葉を続けます。
「これまでで、こんなに調子がいいのは初めてです。」
ショーは、なかなか順調な滑り出しです。マーヴ・グリフィンは、話を先に進めていきます。
「クリント・イーストウッドが私にTMを勧めてくれました。おかげでテニスがうまくなりました。」彼はそう言って、微笑みます。
「TMプログラムは、多くの公立学校でも教えられています。企業や病院やスポーツチームや軍隊でも利用しています。ペンシルバニア州、マサチューセッツ州、ニュージャージー州などの州政府も、いろいろなプロジェクトのために、TMプログラムを取り入れています。」
彼は話を続けていきます。
「先週、デトロイトでは、裁判官が、麻薬を乱用した若い犯罪者に対して、TMテクニックを四年間、一日二回ずつ行うようにという、判決を言い渡しました。」
観客から笑いと拍手が沸き起こります。ここで、マハリシが初めて話し始めます。
「これは悟りの時代の判決です。人は自己の全潜在力を開発するようにという判決が、法によって言い渡されるのです。」
マハリシの言葉が、話の流れを変えるのによいきっかけとなります。マーヴ・グリフィンは、TMについての基本的な事柄へと話題を切り替えていきます。
「いくつか誤解があるかもしれませんから、まず、それをはっきりさせたほうがよいでしょう。TMテクニックは宗教とは関係ありませんね。」
マハリシが答えます。
「関係ありません。これはテクニックです。深い休息を得て、心と体を活性化するための実際的な方法です。」
「TMは私たちに受身的であることを勧めるものではありませんね。」
「そのとおりです。休息は活動の基盤です。TMテクニックよって、人は行動的になり、成功を収めるための能力を増大させます。心が力強くダイナミックになるだけでなく、体もよりよく機能するようになります。」
「ジョー・ナマス(アメリカン・フットボールの有名な選手)のパスがよく通るようになるのですね。」
「そのように聞いています。たくさんの優れたスポーツ選手がTMテクニックを楽しんでいます。」
マーヴ・グリフィンの態度は完全に肯定的なようです。彼のマハリシとの会話は、いきいきとしており、たくさんの情報を与えています。
司会のマーヴ・グリフィンは、他のゲストたちの紹介を始めます。みんなTMテクニックを行っている人たちです。
その中の一人は、「ウォールトン一家」というテレビ番組でウォールトンおばあさんを演じているエレン・コービイです。彼女は、人に安心を与えるしっかりしたおばあさん役としてぴったりの女優です。
「私は数年前に、マハリシの指導するコースに三カ月半、参加したことがあります。思い返すと、そのときが私の人生で最もすばらしいときでした。」
二人目のゲストは、精神科医のハロルド・ブルームフィルド博士です。彼はカリフォルニア州サンディエゴにある心身医学研究所の臨床ディレクターであり、ベストセラーになった「TM──内側のエネルギーの発見とストレスの克服」という本の著者の一人です。
「TMテクニックは、精神医学の成就です。過去75年間に、精神の健康を向上させるための様々な方法に関して多くの研究が行われてきましたが、それ以上の研究が、最近5年間にTMテクニックの効果に関して行われました。」
三人目のゲストは、カリフォルニア州議会の上院議員であるアーレン・グレゴリオ氏です。彼は額にくしゃくしゃの髪がかかったハンサムな男性です。議員の二期目を務めており、上院の二つの重要な委員会の議長をしています。
「私がTMをしているということは話さない方がよいと、最初、私のスタッフたちは考えました。しかし、これは私にとってとても重要な経験です。私は、みんながそれについて知るべきだと思います。TMを始めて二年半になりますが、TMを欠かしたことは二回しかありません。それをしないではいられないのです。」
尊敬に値する女優、現役の精神科医、地位を確立した政治家、しかし、この中でいま最も瞑想に熱中しているのは、おそらくマーヴ・グリフィン自身でしょう。
「私はいつもてんてこまいの仕事をしているのですが、電話の受話器をはずして15分ほど瞑想すると、とても快適になります。瞑想が終わったときには、とても……とても……」
「フレッシュに感じます。」
マハリシがその言葉を与えます。
「そうです。とてもフレッシュに感じます。それがどんなに簡単か、うまく説明できたらよいのですが。」
「それは自然であるから簡単なのです。心は、自然に落ち着いていき、リラックスしていながらも鋭敏な、あの静かなレベルに達します。そして、これは科学からわかることですが、そのレベルは、最少励起の状態、完全な秩序の場です。」
「それはたいへん自然なものです。練習するとか、そういったことは、まったく必要ありません。それで、ますますたくさんの人たちがTMテクニックを楽しんでいるのです。いまでは100万人以上の人たちがこのテクニックを学びました。それで、『悟りの時代の夜明け』がやってきたと、私たちは言うのです。」
ロバート・オーツ著「マハリシが悟りの時代を告げる」より