近年、米国では、数百万人の人々がヨガや瞑想を実践するようになってきた。そして実践者の増大とともに、ヨガや瞑想が最終的に目指す『超越の体験』に関して研究が進められている。
UnsplashのAdrien Converseが撮影した写真
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「超越の体験」とは何の知覚もない、自己のみに気づいている状態
今年、発行されたニューヨーク科学アカデミーの年報誌には、『瞑想中に起こる超越の体験』という記事が掲載され、より高い意識状態を体験した人々の研究について紹介している(2014年1月号)。
その研究論文は、ニューヨーク科学アカデミーが開催した瞑想に関する研究者の会議『瞑想研究の進歩(AMR)』のなかで、フレッド・トラヴィス博士が行った講演に基づいている。トラヴィス博士は、米国マハリシ経営大学の脳・意識・認知センターの所長である。
その論文の中でトラヴィス博士は、瞑想は二元性のない超越の体験へと導くと説明している。超越の体験とは、何の知覚もない、自己のみに気づいている状態である。その論文の一部として、彼は、超越瞑想を行っている52人の被験者から聞いた超越意識の体験について分析している。超越瞑想とは、努力することなく心を内側へと向かわせ、想念を超えた純粋な気づき、超越を体験させるテクニックである。
「超越の体験」は、生理的な変化ももたらす
研究によれば、これら52人の被験者が体験していたのは、「考えも感覚も何の意図もない、ただ純粋な意識への気づきだけが維持されている状態」であり、時間も、空間も、身体感覚もない体験であることが明らかになった。
こうした超越意識の主観的な体験に加えて、特定の生理的な変化が起こることも確認されている。例えば、呼吸数、皮膚抵抗、脳波図のパターンに変化が見られた。
規則的な瞑想で、日常でも超越意識が維持されるようになる
トラヴィス博士はさらに、超越瞑想を規則的に行っていると、超越意識の体験は、眠っている時でも、夢を見ている時でも、そして目覚めている時にも共存するようになると説明する。この状態は伝統的に『宇宙意識』と呼ばれている。それは、日常、活発に考えたり行動しているときにも、超越意識が維持される状態である。トラヴィス博士の論文は、被験者の体験と共に、宇宙意識と関連する生理的なパターンについても解説している。
また、対照となる超越瞑想の被験者グループは、自分の体験を具体的な知覚や行動の過程と関連させて説明するのに対して、宇宙意識を体験した人達は、その体験を自分の考え、感覚、行動の根底にある内なる自己への気づきの連続性として説明している。それに加えて、宇宙意識の被験者は、睡眠中や起きて仕事をしているときの脳波パターンと共に、超越意識の脳波パターンが見られた。こうした脳波パターンは、トラヴィス博士が開発した脳統合性尺度によると、脳機能がより統合されていることを示している。
超越の体験は、脳のより広い範囲に影響を与え、脳の潜在的予備能力を目覚めさせます。そのことは感覚誘発電位と呼ばれる計測方法を用いて、TM中の脳機能を測定した研究によって確かめられました。しかし、今では脳で起こっていることを測定できるもっと興味深い方法があります。それはコンピューターで脳波の同調を測定する方法です。
脳のある部分が活動しているとき、その部分に電気的な活動が起こりますが、それは脳波計によって測定することができます。脳波計を用いると、そうした脳の電気的な活動は、時間とともに変化する波として表されます。
そうした脳の異なる部位の脳波をコンピューターで処理することで、各部位の脳波の同調率を計算することができます。もし、異なる部位の脳波が同調していれば、それは脳の異なる部位が互いに結びついて全体的に機能していることを意味します。
通常、脳が活動しているときには、同調度は30〜40%ぐらいで、あまり高くありません。しかし、超越しているときには、脳波の同調率が90%にまで高まることが、次の動画の中で示されています。
このように、超越の体験は、脳全体に影響を及ぼして、脳が一つのより統合された全体として機能できるようにします。
■動画:超越瞑想による脳波の同調 EEG
超越を体験するには、超越瞑想というテクニックが必要
トラヴィス博士は、このようなより高い意識状態は、ピアジェが解説する古典的な段階を超えた正常な発達として見ることができると述べている。超越を体験するためには、超越瞑想という一つのテクニックが必要となる。
より高い意識状態の実際的な恩恵は、自分自身の内なる自己により深く根ざし、それによって日々の生活の浮き沈みに圧倒されなくなることだとトラヴィス博士は言い、「瞑想の実践のより大きな目的とは、より高い意識状態の開発にあることをこの研究は示している。」と説明する。
原文・TM blog