フラッシュバック、悪夢、不眠に悩む退役軍人のPTSDを瞑想で緩和する

超越瞑想が退役軍人のPTSDを軽減することを示す研究結果が『Lancet Psychiatry誌』に掲載された。以下はその抄訳である。

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【記事の要約】

  • PTSDの退役軍人203人のうち、61%が超越瞑想によって症状が改善した。
  • それに対して、従来の長時間の暴露療法(トラウマの記憶に向き合う手法)を受けた人では42%にとどまった。
  • 超越瞑想は、退役軍人の辛い記憶を徐々に解放すると考えられている。 

2018年11月16日 10:32 BST

退役軍人省がPTSD治療のために瞑想やヨガを利用

Bec TによるPixabayからの画像

フラッシュバック、悪夢、不眠に悩まされている退役軍人のPTSD(心的外傷後ストレス障害)が、瞑想によって緩和されるという研究結果が、『Lancet Psychiatry誌』で発表された。

PTSDと闘っている元兵士の3分の2近くが、超越瞑想(TM)を3カ月間行った結果、症状が改善したことが明らかになったのだ。

TMと比較して、従来の長期暴露療法(トラウマになるような出来事を思い出し、苦しい記憶に向き合う手法)で効果があったと答えたのは5分の2だけだった。

TMとは、マントラや音を思い浮かべることで心を落ち着かせる手法である。それが、退役軍人の苦痛な記憶を解放できる可能性があることが研究によって明らかになったのだ。

ワシントンDCにある米国退役軍人省の研究者たちは、203人の元兵士を、TM、長期暴露療法、PTSD健康教育のいずれかを受けるグループに無作為に割り当て、長期暴露療法とPTSD健康教育を受けた人々を対照グループとした。

参加者は全員、何週間にもわたって、それぞれの療法を90分×12回受けたほか、自宅でも毎日実践するように指示された。その結果、TMを実践した被験者の61%が、3カ月後にPTSDの重症度の点数が10ポイント以上改善したことがわかった。

それに対して、体育を受けた人は42%、健康教育を受けた人は32%しか改善しなかった。重症度は、フラッシュバック、悪夢、不眠の程度を考慮して測定された。

PTSDは治療が難しく、退役軍人の10~20%がPTSDの症状を抱えていると言われている。退役軍人省の医療制度によると、2013年には米国で約40万人の元兵士がPTSDを患っていることが知られている。

退役軍人省では長期暴露療法を推奨しているが、多くのPTSD患者がこうした療法を拒否したり、途中で脱落する人が多いと当研究の筆頭著者で退役軍人省の心理学者トーマス・ラトリッジ氏は述べていた。

彼は、TMの有効性を示す証拠があれば、「より多くの選択肢を退役軍人たちに提供できる」と考えている。「おそらく瞑想の方が、彼らを脅かすことはないでしょう。」

PTSDのための国立センターのエグゼクティブ・ディレクターであるポーラ・シュナー氏によると、退役軍人省は、すでに伝統的な長期暴露療法を補うために瞑想やヨガを使用しているという。

超越瞑想についてはこちら

ソース:Meditation eases PTSD in veterans suffering from flashbacks, nightmares and insomnia

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