米国心臓協会(AHA)が2013年4月22日に公表した報告書は、超越瞑想(TM)には血圧を下げる効果があると結論づけ、高血圧の予防と治療のための臨床診療にTMの利用を検討することを推奨している。
写真:UnsplashのDmitry Ratushnyが撮影
「薬物療法と食事療法を越えて──血圧を下げる代替的アプローチ:米国心臓協会からの科学的声明」と題されたこの報告書は、血圧を下げる効果を研究により確認された代替的アプローチを医師たちに告知する目的で公表された。(研究論文はこちら)
さまざまな種類の瞑想法を対象に行われたメタ分析および最新の臨床試験を検討した結果、血圧を下げるための方法として超越瞑想を推奨するが、その他の瞑想法やリラクセーション法は推奨するための科学的証拠が十分ではない、と報告書では述べられている。
米国心臓協会(AHA)によると、超越瞑想は血圧を下げる効果が実証された唯一の瞑想法である。またAHAによると、「他のすべての瞑想法(マインドフルネス・ストレス低減法も含む)は、有効性を否定する研究結果や、肯定否定両面ある研究結果が多かったため、また、入手可能な試験結果が少なかったため、『クラスIII、効果なし、証拠レベルC』と評価された。そのため現段階では他の瞑想法は臨床診療において血圧を下げる方法として推奨されていない。」
AHAの科学的声明は、以下のように報告している。
- 超越瞑想を実践すると血圧が下がるだけでなく、死亡率および心臓発作と脳卒中の発症率が有意に減少するという研究結果も報告した。
- 患者の血圧値が120/80 mm Hgを超えている場合、治療計画において、超越瞑想を含めた代替治療の利用を検討することが推奨される、と結論づけている。
「これは医療の進歩における重要かつ飛躍的な前進です。医師、健康保険運営機関、政策立案者に専門的な診療指針を提供する国営医療機関が超越瞑想の有効性を認め、その利用を検討するように推奨したのは、これが初めてだからです」とロバート・シュナイダー医学博士(米国心臓病学会特別会員)は語った。
シュナイダー博士は自然医療・予防研究所の所長であり、超越瞑想と心臓病に関する多数の研究の責任者を務めてきた。
「このような指針声明は健康保険各社が長年要請してきたものです。」
この報告書の執筆者たちは、瞑想などの行動療法、非侵襲的な治療手段と装置、および運動を主体とした療法という三つのカテゴリーの代替的アプローチについて評価を行った。報告書には食事療法や栄養補助食品の検討は含まれていない。
AHAからこの報告書が出された背景には、薬物療法を受けるのを時には躊躇する患者たち自身がその機運を生み出したという面もある。
「『薬物療法は受けたくないのだが、血圧を下げるために自分でできる方法があれば教えてほしい』という要望が患者からよく聞かれます。」と、この報告書を作成した専門委員会の議長であるロバート・ブルック医学博士は語る。「私たちはなんらかの指針を示したかったのです。」
この報告書で引用されているメタ分析では、超越瞑想を実践すると平均して最大血圧が5 mmHg、最小血圧が3 mmHg下がることが確認された。シュナイダー博士は、かなり控えめな言い方ではあったが、次のように指摘した。すなわち、血圧がこれだけ下がれば、高血圧の症状をもつ人々のうち数百万人は、血圧を正常範囲に近づけることができるし、予防にもなるので、副作用が伴い費用もかかる高血圧の薬物療法を受けずにすむかもしれない。また臨床試験では、超越瞑想の実践による血圧の低下は、死亡率や心臓発作、脳卒中の発症率を有意に減少させることが示された。
「私たちは、高血圧に対するTMの有効性を実証した私たちの研究が認められつつあるのをありがたく思っています。そしてこのコンセンサスが医療におけるTMの幅広い利用につながることを希望しています。」と、シーダーズ・シナイ医療センターの内科学教授のC・ノエル・バイレイ・メルツ博士は語った。メルツ博士は、NIHから資金提供を受けて行われた超越瞑想と心臓血管の健康に関する臨床試験の責任者である。
報告書では、全般的に見て超越瞑想は安全であり有害な副作用はないと考えられる、ということも確認された。さらに報告書では、もう一つの利点として、検討の対象となった瞑想などの代替療法の多くは、血圧を下げたり心臓血管のリスクを減少させるだけでなく、心理面の健康にも有益な効果をもたらす可能性があることにも言及された。
報告書は結論として次のように述べている。
「本報告書の執筆陣は次の点で意見が一致した。すなわち、患者の血圧値が120/80 mm Hgを超えている場合、臨床的に問題がなければ、治療において血圧を下げる補助方法として代替的アプローチの利用を検討するのが妥当である。」