世界最大のヘッジファンドが、リーマン・ショックを予測して危機を回避した原則

投資会社ブリッジウォーターCEOレイ・ダリオ

リーマン・ショックを予測し、大きな損失を免れた世界最大の投資会社ブリッジウォーターCEOレイ・ダリオ氏は、40年来の瞑想者だ。彼はどのようにして危機を回避したのか?

その理由は「お金」ではなく「精神性」にあった。月刊誌クーリエジャポン(2011年8月号)の特集「危機に勝つ人はこう考える、世界に学ぶリーダーの条件」の記事のなかで、彼は次のように語っている。

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リーマン・ショックをあらかじめ予測し大きな損失を免れた、投資会社のブリッジウォーター。同社のCEOレイ・ダリオが社員に説くのは、「金の儲け方」ではなく「正しく生きよう」という精神論だ。

「超越瞑想(TM)」を長年続けてきたダリオは、瞑想中にひらめいた自己実現の方法をブリッジウオーターの企業文化として浸透させてきた。TMのスポークスマン的存在である映画監督のデヴィッド・リンチを招き、社員向けにTMセミナーを開いたこともあるほどだ。

ダリオが初めて投資を試みたのは12歳のときだった。バイトで稼いだ300ドルでノースイースト航空の株を買ったのだ。その数年後、同社がデルタ航空と合併されたことによって、5ドルの株価は3倍になった。

その後、ダリオはラグビーチームの仲間と2人でブリッジウオーターを設立した。資産運用の経験が浅い2人だったが、会社設立後すぐに、数百万ドル単位で資金を運用している大手年金基金を顧客にすることができ、顧客を増やしていく過程でダリオは、独自の投資理論を展開していた。

彼は世界経済を、情勢の変化のなかで一定のサイクルを繰り返している巨大なマシンとして捉えた。そして、そのパターンとその変化の引き金となる小さな事象から、景気の波を予測するコンピュータシステムを構築した。

2006年、ブリッジウオーターのコンピュータは米国経済が「国家破産」に突入しつつあるという分析結果を出した。ブリッジウオーターのトレーダーは、このままでは危ないと思われる投資の案件を識別していった。そして、2008年春にリーマン・ブラザーズやベア・スターンズなどの投資から手を引くという決断を下した。それは、ベア・スターンズが破産する前の週のことだった。ダリオをあざ笑ってきた経済批評家も、投資家としての彼の能力を認めざるを得なくなった。

ダリオは社員管理にも経済のように、一定のパターンを当てはめることができると考えている。それを文書化した社内ルールが「原則」だ。

ダリオの「原則」はただのマニュアルではない。本の前半の「私の最も基本的な人生の原則」という部分では、彼が「自分自身を段階的に進化」させた経験が書かれており、まるで自伝のようだ。ここにはお金を儲ける方法ではなく、会社のルールに従うことの重要さ、失敗から学ぶこと、目的を達成するといった精神論が書かれている。このような「正しく生きていれば何が起きても大丈夫」という精神こそが、ブリッジウオーターの”ルール”なのだ。(記事の抜粋)

■月刊誌クーリエジャポン(2011年8月号)
「世界最大のヘッジファンドが貫く風変わりな人生とビジネスの原則」

クーリエジャポン2011年8月号

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■超越瞑想に関して答えるダリオのインタビュー

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