戦場から帰還した兵士でも心の傷からは逃れることができない。多くの兵士が、帰還後も心的外傷後ストレス(PTSD)のなかで苦しんでいる。しかし、戦場となった国の犠牲者はもっと過酷な状況の中にある。
ここ数年、何百万もの人々が戦争の犠牲となっており、何十万もの人々が、難民キャンプの過酷なストレスのなか、何とか生き残ろうと苦闘している。難民達は、戦争で自分や家族の人生に起こったことを、絶えず思い出しながら生きている。彼らは、将来の不安、過酷な運命、極度のストレスを抱えて生きているのだ。
超越瞑想は、こうした苦難に直面している人々を助けることができるだろうか?
トラウマ性ストレス・ジャーナル(2013年4月号)に掲載された研究では、難民キャンプに住む人々を対象にして、超越瞑想を学ぶ前と学んだ後の心的外傷後ストレスの重症度を測定した。その結果、症状が劇的に改善したことが確認されている。
この研究では、コンゴの内戦から避難して、ウガンダに住んでいる42人の難民を、超越瞑想を学ぶグループと、研究の後に学ぶグループとに分けた。この二つのグループは、参加者の年齢、性別、心的外傷後ストレスの重症度が同じになるように調整された。すべての参加者は、研究開始時点、超越瞑想を学んで30日後、135日後に、心的外傷後ストレス障害の評価表に記入した。
瞑想を学んでいないグループの評価表の点数は、研究開始時点から二回の事後テストまで、上昇する傾向が見られた。それに対して、超越瞑想を学んだグループの点数は、研究開始時点では高い数値を示していたが(心的外傷後ストレスが重症であることを示す)、超越瞑想を実践して30日後には、症状が見られないレベルにまで減少し、135日後も低いレベルのままとどまっていた。
「私たちは、症状が改善されることを予測していましたが、これほど劇的な変化が見られるとは思ってもいませんでした」と、この研究論文の執筆者であるブライアン・リース(医師、公衆衛生学修士)は語っていた。
「4カ月間にわたって継続的な改善が見られたことから、超越瞑想は、心的外傷後ストレスに苦しむ全ての人にとって、非常に価値あるテクニックであるという結論に至りました。」
また、共同執筆者のフレッド・トラヴィス博士(マハリシ経営大学の脳・意識・認知センター所長)は、次のように言う。
「超越瞑想の実践が、難民達の心的外傷後ストレスの症状に、非常に早く影響を及ぼすことを知り、とても驚きました。彼らは家もなく、仕事もなく、周囲の人々からの援助もわずかしかありません。これらの研究結果は、超越瞑想が世界中に見られる心的外傷後ストレスの発生率の増加に対して、効果的な解決策になることを示しています。」
心的外傷後ストレスに苦しむ人は、異常なほど敏感で、常に緊張し、眠りが浅く、他人を信用できず、記憶の問題があり、何かを決断したり、それを最後までやり遂げることに困難を感じる。心の傷を負った人々は、内面の状態と外側の状況の両面で、問題に直面しているのだ。そのため、心的外傷後ストレスの症状は、一般の治療法ではあまり改善が見られない。しかし、超越瞑想中に得られる安らぎに満ちた機敏さの体験には、明らかにトラウマの症状を改善する効果があるようだ。
アフリカの難民に起こった心的外傷後ストレスの減少は、過去に行われたベトナム戦争やイラク・アフガン戦争の帰還兵を対象とした研究結果を再現したものといえる。
無作為に選ばれた18人のベトナム帰還兵を対象にした研究では、超越瞑想の実践後、不安感、抑鬱、不眠症、アルコール中毒、心的外傷後ストレスの症状、ストレス反応の度合いに減少が見られた。その研究結果は、超越瞑想が心理療法よりもはるかに効果的であることを示している。
イラク・アフガン戦争の帰還兵を対象にした研究においても、超越瞑想を3カ月実践した後、不安感、抑鬱、心的外傷後ストレスの症状が減少したことが報告された。これらの研究結果は、超越瞑想の実践が心的外傷後ストレスの症状を軽減する効果があることを裏付けている。
さらに、超越瞑想が文化を超えて、トラウマの体験による行動面、心理面、生理面の症状を軽減する効果があるかどうかを調べるために、量的および質的な計測の両方を評価する広範囲にわたる研究が行われている。