治癒者を癒す/2019年パンデミック【科学的根拠に基づく超越瞑想の効果】

救急臨床医に対する
TM介入の実行可能性・受容性・発展的有効性

超越瞑想による緊急臨床医のスコアの変化

  • CI:信頼区間
  • GAD-7:全般性不安障害スケール7項目
  • PHQ-8:被験者の健康に関する質問8項目
  • PSS-4:知覚ストレス・スケール4項目
  • PROMIS SF(Patient Reported Outcomes Measurement Information System Fatigue Short Form):被験者が報告する健康状態の信頼できる正確な測定システムとその結果の手短な報告書
  • T1:ベースライン
  • T3:TM実習開始から3か月後

定性的に参加者のほとんどが、TM(超越瞑想)により全体的に幸福感、安心感が増し、TMのプラスの影響により「意思決定をより容易にすることができる」「TMにより、私はよりよい医師かつ指導者になっていると思う。またローテーションの勤務体制にてよりよい同僚になっていると思う。」等の報告がなされた。

【概要】

目的:救急臨床医は燃え尽き症候群の発生率が高く、これが臨床医自身、患者、および医療システムにマイナスの結果をもたらしている。本研究は、対照群なしの単群パイロット研究で、2019年コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック時の救急臨床医について、超越瞑想(TM)介入の実行可能性を評価することを目的とする。さらに、燃え尽き症候群、睡眠、心理的健康の改善に関する潜在的有効性についての解明を行う。

手法:本研究では、TMの指導を受けて実習(8個人またはグループ、対面およびリモートセッションで3か月間)して頂ける救急臨床医(医師、看護師、および医師助手)を都市の2病院から募集した。セッションへの参加が実行可能性の主要結果となるが、セッションへの参加率を6/8と事前に指定し、燃え尽き症候群を主要なアウトカムとした。参加者が報告した実行可能性の測定値と検証された測定値、睡眠障害、燃え尽き症候群、うつ病、不安神経症、睡眠障害、およびストレスの割合は、ベースラインおよび1か月と3か月のフォローアップで収集した。 分析には、記述統計と線形混合効果モデルを用いた。

結果:参加者は、14人の医師(46%)、7人の看護師(22%)、および10人の医師助手(32%)で、その中で61%が女性であった。 TMトレーニングと在宅瞑想90.6%が6/8のトレーニングセッションに参加し、臨床医は実習を行うことができた。そして80.6%が平均して少なくとも1日1回瞑想していると自己申告した。参加者の燃え尽き症候群は大幅な減少を示し(P <.05;効果量、コーエンのd = 0.43–0.45)、うつ病、不安、ストレス、睡眠障害の症状(P値<.001;コーエンのd = 0.70–0.87)でも改善が見られた。

補足:コーエンのd効果量は、心理学等でよく使われ、効果の程度を解釈する際に、小(0.2)、中(0.5)、大(0.8)などの一般的な目安とされる。ベースラインは、研究を開始する時点における対象者の年齢,性別,疾患の重症度といった背景因子や臨床特性の状態・値の事を指す。

[Reference]
Desiree R. Azizoddin, Noelia Kvaternik, Meghan Beck, Guohai Zhou, Mohammad Adrian Hasdianda, Natasha Jones, Lily Johnsky, Dana Im, Peter R. Chai, Edward W. Boyer, “Heal the Healers: A pilot study evaluating the feasibility,acceptability, and exploratory efficacy of a Transcendental Meditation intervention for emergency clinicians during the coronavirus disease 2019 pandemic”, JACEP Open 2021;2:e12619. wileyonlinelibrary.com/journal/emp2 1 of 11 https://doi.org/10.1002/emp2.12619

掲載ジャーナル:JACEP Openは米国の救急医から成る専門組織(the American College of Emergency Physicians )が発行する公式の研究論文誌で、国際的な査読付きオープンアクセスジャーナルです。また、JACEP Open はWiley (1807年設立の科学、医学、教育などの分野の世界的な学術出版社)によって発行されており、オンラインでのみ入手できる。

監修:土田賢省(東洋大学教授)

写真:Unsplashcamilo jimenez 撮影

超越瞑想についてはこちら