超越瞑想は国や文化に関係なく、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状を軽減する

戦争や災害、暴力体験や医療現場での強いストレスなど、人生の中で深い心の傷を負った人々は少なくありません。そうした心の傷のひとつが「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」で、フラッシュバックや過覚醒、抑うつ、睡眠障害などを引き起こし、日常生活に重い影響を与えます。

今回、アメリカのマハリシ国際大学(Maharishi International University)が発表した研究は、こうしたPTSDの症状を和らげる方法として、瞑想がどのような役割を果たせるのかを丁寧に検証したものです。

多様な人々に共通して見られた改善

この研究で注目されたのは「超越瞑想(TM)」という特定の瞑想法です。研究者たちは、これまでに行われたTMに関する研究データを統合し、PTSDの症状が実際に改善するかどうかを大規模に検証しました。対象となったのは1200人以上。国も文化もバックグラウンドも異なり、軍人、戦争難民、震災被災者、医療従事者、家庭内暴力の被害者など、多種多様な人々が含まれています。今回の研究が興味深いのは、この異なる背景を持つ人たちすべてにおいて、共通してTMが症状改善に効果を示した点です。

“過去を語らなくてもいい”アプローチ

PTSDの治療には、一般的に「トラウマと向き合う」治療法が多く用いられます。過去の体験を言葉にし、向き合い、整理することが治療のプロセスとなります。しかし、そのやり方が重荷になる場合もあります。つらい経験を語ること自体がストレスとなり、再体験に近い苦痛を引き起こすこともあるからです。その一方で、TMはトラウマそのものを直接扱いません。瞑想中の意識は穏やかに落ち着き、思考や感情の負荷が放電されるように和らいでいきます。研究では、一日二回の短いTMの実践を続けることで、神経系が落ち着き、心身がリセットされるような感覚が生じる可能性が示唆されています。

生理的にも現れる“穏やかな変化”

特に興味深いのは、この変化が単なる心理的な気分改善にとどまらず、脳波やストレスホルモンなどの生体指標にも反映されるという点です。PTSDによって過敏状態になっている自律神経系が、瞑想によって自然と安定を取り戻し、その結果として症状が軽減していく可能性があるというのです。

もちろん、TMはすべての人にとって万能な治療ではありません。深刻な症状がある場合は専門医の診断や治療が欠かせませんし、瞑想が適切かどうかは人それぞれです。ただし、心の回復を支える選択肢として、「過去を話す必要がない」「自分のペースで進められる」「文化や言語に左右されにくい」という点で、多くの人に受け入れられやすい方法であることが、今回の研究から浮かび上がってきます。

心に負った傷を癒すというのは、とても個人的なプロセスです。時間がかかることもあるし、誰かの支えが必要なこともあります。その中で、自分自身の内側に静けさと回復力を育てる方法があるというのは、ひとつの希望と言えるかもしれません。

研究概要
最新の論文に掲載された15の研究すべてにおいて、TMはすべてのケースで対照群よりも迅速に効果を発揮したことが示されています。この図に示されている4つのチャートは反復測定を使用しており、TM(点線)が対照群(実線)よりも迅速に効果を発揮したことを示しています。軍人の場合(Nidich et al., 2018)、TMは健康教育(HE)または米国退役軍人局が使用する第一選択療法である長期曝露療法(PE)よりも迅速に効果を発揮しました。戦争と人種差別の時代に生き、トラウマを負った南アフリカの大学生の場合(Bandy et al., 2019)、TMは通常の大学カリキュラムのみを受けた対照群(NT = 無治療)よりも迅速に効果を発揮しました。COVID-19の期間中の臨床看護師の場合(Bonamer et al., 2024)、TMは実験後までTMの習得を待つことに同意した待機リスト対照群(WLC)よりも迅速に効果を発揮しました。家庭内暴力(虐待を受けた女性、Leach and Lorenzon, 2023)の被害者にとって、TMはサポートグループ療法よりも早く効果を発揮しました。あらゆる集団のPTSD患者は、TMを実践してから1ヶ月以内にPTSD症状の明らかな軽減を実感しました。推奨されている1日2回のスケジュールに従ってTMを実践した患者が最も良い結果を得ました。

ソース:Meta-analysis finds Transcendental Meditation reduces post-traumatic stress disorder (PTSD) symptoms across populations and cultures