PTSDの症状が瞑想によって劇的に改善されることを示す研究結果が『Journal of Traumatic StressTrusted Source』に掲載された。
以下はその抄訳である。
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新しい研究では、超越瞑想がPTSDの症状を軽減に役立つかどうかを調査した。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療法の多くはトラウマに焦点を当てたものだが、超越瞑想(略してTM)はよりリラックスした形で症状を癒やすと言われている。
小説では、主人公が過去のトラウマを克服するために、自分の痛みと向き合うという展開がよくあるが、現実にはそう簡単にはいかない。
今回の新しい研究論文では、超越瞑想を実践している人のPTSD症状が劇的に軽減されることが明らかになった。
トラウマと向き合うことをしない
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この研究では、超越瞑想を3カ月間実践した退役軍人の50%が、PTSDの基準を満たさなくなったのに対し、トラウマと向き合う標準的な療法を受けた人の場合は、わずか10%だった。研究者たちは、参加者の睡眠の問題、うつや不安の症状が大幅に減少したことを確認した。
ニューヨーク州ベイショアにある退役軍人の統合行動保健センターの主任研究員メイヤー・ベルセン博士は、次のように述べている。
「超越瞑想は、トラウマと向き合うことをしない、習得しやすいテクニックです。今回の実験では、体が深い休息を経験することで、PTSDの症状が改善されることがわかりました。」
この実験は、ノースウェル・ヘルス社、ニューヨーク大学、マハリシ国際大学(MIU)研究所(アイオワ州フェアフィールド)の共同研究によるもので、その実験結果は、『Journal of Traumatic StressTrusted Source』に掲載された。
この研究は、これまでの研究を裏付けるものだとベルセン博士は説明していた。
「一般的なPTSDの治療法は、トラウマに焦点を当て、患者が過去のトラウマ体験を思い出すことに基づいて行われます。しかし、こうした手法は、一部の人にとって取り組むのが難しいと感じるものです。それとは対照的に、TMテクニックでは、その人のトラウマの経験を振り返る必要はありません。ですから、この手法は、PTSDを患う人にとって受け入れやすいものです」。
この研究論文の著者が指摘しているのは、PTSDの患者にとってTMの有効な点は、ストレスに対する生理的反応にうまく対処できるようになることだ。
著者によると、これまでの研究で、TMは過覚醒の症状を軽減し、精神的な回復力(レジリエンス)を強化し、他の治療法の助けになることが示されているという。
また、この新しい研究は、『The Lancet PsychiatryTrusted Source』に掲載された2018年の研究の結論を裏付けるものだ。2018年の研究では、大規模な無作為化対照実験によって、TMがPTSD治療法として有望であることが実証された。
今回の研究の上級著者であり、MIU研究所の社会情緒的健康センターの所長サンフォード・ニディッチ博士は、「今回の研究は、PTSDを抱える退役軍人にとって、TMは最も簡単に利用できる治療法であることを示している」と説明していた。
トラウマの代替治療
ノースウェル・ヘルス社は、この研究論文のために、PTSDの症例が認められている40人の退役軍人を対象とした無作為化実験を実施した。参加者は20人ずつの2つのグループに分けられ、実験は12週間にわたって行われた。
TMを実践するグループは、1日2回の自宅での実践に加えて、16回の瞑想セッションに参加した。もう一方のグループは、すでに受けている従来の薬物療法や心理療法によるPTSDの治療を継続した。
研究者たちは、実験開始時と終了時に、さまざまな質問票を用いて参加者を評価した。また、臨床医が管理するPTSD尺度と、PTSDチェックリストによる患者の自己申告を測定ツールとして使用した。
その結果、TMを実践するグループでは、自己申告によるPTSD症状、抑うつ、不安に、有意な減少が見られた。PTSDの症状のうち、有意な減少が見られなかったのは、怒りの症状だけだった。
ニディッチ博士は、PTSD患者にとってTMが効果的なツールであることを次のように説明している。
「超越瞑想というエビデンスに基づく治療法が追加されることで、PTSDの治療法の選択肢が増えるとともに、トラウマに焦点を当てた治療を受けたくない人や、従来の治療法では改善が見られない人にとって、TMは代替治療としての役割を果たすでしょう。」
論文の著者はさらに、TMは退役軍人だけでなく、現役の軍人にも効果があると述べている。