この研究では、超越瞑想が他の手法と比較して退役軍人のPTSD症状を軽減し、従来の治療の代替手段となることがわかりました。
心的外傷後ストレス障害の退役軍人における
非外傷(非トラウマ)に焦点を当てた
超越瞑想と暴露療法の比較:無作為化比較試験
【概要】
背景:心的外傷後ストレス障害(PTSD)は複雑で治療が難しい障害であるが、退役軍人の10~20%が罹患している。先行研究では、外傷(トラウマ)に焦点を当てていない治療が、PTSD症状の軽減において外傷暴露療法と同程度効果的であるか否かという問題が提起されている。本研究は、トラウマ(外傷)に焦点を当てない実践である超越瞑想(TM)と非劣性臨床試験における長期曝露療法(PE)と比較し、さらにこの両方の療法とPTSD健康教育(HE)のコントロール群と比較することを目的とした。
手法:米国カリフォルニア州の退役軍人省サンディエゴヘルスケアシステムでランダム化比較試験を実施した。兵役の実働に起因するPTSDの診断を現時点で受けている203人の退役軍人をブロックランダム化によってTMとPEグループ、そしてHEのアクティブコントロールグループにランダムに割り当てた。各治療は12週間にわたって12回のセッションを提供し、毎日の在宅診療が行われた。 TMとHEは主にグループで実施し、PEは個別に与実施した。主な結果は、臨床医が管理するPTSDスケール(CAPS)によって評価された、3か月にわたるPTSD症状の重症度の変化である。分析は、ITTを意図したものであった。TMがCAPSスコアの改善においてPEに対して非劣性を示し(Δ= 10)、TMおよびPEがPTSDHEよりも優れていると仮説を立てた。
結果:2013年6月10日から2016年10月7日までの間に、203人の退役軍人が介入グループにランダムに割り当てられた(68人がTMグループ、68人がPEグループ、67人がPTSD HEグループ)。 TMは、ベースラインからテスト後3か月までのCAPSスコアの変化において、PEに対して有意に非劣性であった(平均変化のグループ間の差-5・9、95%CI -14・3から2・4、p = 0・0002)。標準的な優位性の比較では、CAPSスコアの有意な低下がTM対PTSD HE(–14・6 95%CI、–23・3~-5・9、p = 0・0009)、およびPE対PTSD HE(– 8・7 95%CI、-17・0から-0・32、p = 0・041)。 TMを受けた人の61%、PEを受けた人の42%、およびHEを受けた人の32%がCAPSスコアに臨床的に有意な改善を示した。
解釈:非外傷(非トラウマ)に焦点を当てた治療法であるTMは、退役軍人のPTSD症状の重症度を軽減するための実行可能な選択肢であり、PTSDの従来の曝露ベースの治療を受けたくない、あるいは、その治療に反応を示さない退役軍人にとって効果的な代替手段となりえる。
本研究の資金源:本研究は、米国陸軍医療国防総省によって支援された調査である。助成金番号はW81XWH-12-1-0576およびW81XWH-12-1-0577である。
[Reference]:Sanford Nidich, Paul JMills, Maxwell Rainforth, Pia Heppner, Robert Schneider, Norman Rosenthal, John Salerno, Carolyn Gaylord-King,Thomas Rutledge, “A randomized controlled trial of non-trauma focused meditation compared to exposure therapy in veterans with PTSD”, The Lancet Psychiatry, Volume 5, Issue 12, pp.975-986, December 2018.
掲載ジャーナル:The Lancet Psychiatryは、臨床、公衆衛生、および健康、医療分野において、学術的に信頼できる、世界水準の知識(情報)源となっている。 Lancet Psychiatryのインパクトファクターは27.083で、世界の代表的な156の精神医学ジャーナルの中で2番目にランクされている。
監修:土田賢省(東洋大学教授)
写真:UnsplashのBenjamin Faustが撮影
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