瞑想は、世界を変えることができるか?「瞑想する大統領」の驚くべき物語

心理学の雑誌「Psychology Today」のオンライン版に「瞑想は、世界を変えることができるのか?」という記事が紹介されている。長期の内戦で荒廃していたモザンビークをシサノ大統領は、防衛や教育に超越瞑想を導入することで奇跡的な復興を成し遂げたからだ。

以下は、その記事の抄訳。

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先週、私が教えている学生の一つのグループが、精神的な哲学者ケン・ウィルバーに関するプレゼンテーションを行った。そのとき見たビデオのなかで、ウィルバーは「世界の飢饉をなくす最高の方法は瞑想することだ」と語っていた。

そのコメントに対して、憤慨している学生もいたし、私が最初に感じたことは、彼のコメントはもっともらしく聞こえるが、不快であるということだった。明らかに、飢饉をなくす最高の方法とは、食物を与えたり、お金を寄付すること、あるいは紛争を静めたり、政治の腐敗を減らすことだからだ。

しかし、ウィルバーの意味することを明確に示す事例がある。それは、瞑想する大統領、モザンビークのジョアキン・シサノの物語だ。

1992年に、15年間におよぶ荒廃と約100万人の犠牲者を出した後に、モザンビークの内戦は終結した。しかし、国土は完全に荒れ果てて、多くのアフリカ諸国を悩ましていた対立と腐敗のサイクルにモザンビークもはまってしまう。そうした状況のなか、ジョアキン・シサノは、思いやりのある賢明な行動を通して、世界を驚かせたのだ。彼自身の支持母体を強化するために、政敵に復讐するのではなく、シサノは彼の政府を倒そうとしていた反乱軍を大切に扱った。彼は相手に譲歩して、反乱軍にモザンビーク軍の地位の半分を提供し、彼らを起訴したり刑罰を与えないと約束する。反乱軍を壊滅させるのではなく、政治的な権力を与えて、彼らと一緒に働き始めたのだ。

その2年後、モザンビークで初めて多党選挙が行われたとき、シサノと反乱軍の元リーダーは投票場で対決することになる。そして、選挙に勝ったシサノは、貧困を減らし、平和を維持するための活動に取りかかったのだ。1997年から2003年にかけて、約2000万人の全人口のうち約300万人が、深刻な貧困から救い出された。その結果として、5才未満で亡くなる子供の数は35%減少し、小学校に通う子供の数も65%増加する。違いを脇において、旧敵と和解するシサノの能力によって、モザンビークは自滅の瀬戸際から抜けだし、代わりにアフリカで最も安定した平和な国の一つになった。

シサノを良識のある情け深いリーダーにしたのは、何だったのか?

1992年に、彼は超越瞑想(TM)を学んだといわれている。自らTMを学び、すぐにその効果に気づいた彼は、家族、閣僚、政府の役人たちにTMについて話した。1994年には、1日2回、20分間瞑想することが、すべての軍人と警察官の募集の必要条件となる。

シサノ自身は、モザンビークの平和と繁栄は大人数で瞑想することによって生み出されたと確信しているようだ。彼は次のように述べている。

「瞑想の結果として、我が国に政治的な平和と自然のバランスがもたらされました。戦争の文化は、平和の文化に取って代わらなければなりません。その目的のために、私たちの心のなかで、私たちの意識のなかで、より深い何かが変わらなければならないのです。それによって、戦争の勃発を未然に防ぐことができます。」

2004年に、大統領の2期目の任期が終了したとき、彼はモザンビークの法律に則って、合法的に任期を延長することもできたが、それよりも退任することを選んだ。それ以来、彼は政界の長老として平和運動に関わったり、国連の公使や交渉者として活動している。2007年、シサノの68回目の誕生日に、彼はアフリカのノーベル賞に相当するモ・イブラヒム賞(アフリカの優れた指導者に贈られる賞)を受賞した。

これがウィルバーの指摘していた点だ。短期的には、瞑想は怒りや攻撃性を減らす効果があり、長期的には、共感、思いやり、道理をわきまえて行動する能力を高める効果がある。それによって、自己中心的なふるまいが減り、権力や富に対する異常な渇望が少なくなるのだ。瞑想は、内側に幸福感を生み出すことで、誰かに侮辱されたり、差別されても、それに影響されることが少なくなるといわれている。

瞑想に関する研究調査は、こうした効果を実証してきた。2003年に、ウィスコンシン大学の科学者は、仏教系の瞑想を長年実践している人々の脳を調べた結果、彼らの左前頭前野が活発に機能するようになることを発見した。そこは、肯定的な気分や感情と関連する脳の領域である。要するに、彼らは普通の人々よりも幸福であるということだ。2011年に、マサチューセッツ大学マインドフルネスセンターで行われた研究では、16人の被験者が、毎日平均27分の瞑想を行ったところ、8週間後のMRIスキャンでは『灰白質』が増加することがわかった。そこは、思いやり、自己反省、学習と関連した脳の部分である。

一見もっともらしいウィルバーのコメントは、おそらく正しかったのだろう。人間の社会的なふるまいは、内面の心の状態が外側に現れたものだ。世界の不一致は、私たちの心の不一致から生じてくる。だからこそ、私たちの内側に調和と平和があるときにはじめて、世界に調和と平和が生み出されるのだろう。

 
Source:Can Meditation Change the World? The amazing story of the ‘meditating president.’ by Steve Taylor Ph.D. Steve Taylor Ph.D., Psychology Today