ビジネスの世界は、特にその上層部は、わざわざ時間をとって静かに座り目を閉じて瞑想するというようなことが最も起こりそうもないところだ。しかし、そう考えるのは間違っている。これから紹介するビジネスマンは、瞑想の時間をとるだけでなく、ビジネスと私生活の成功の大部分は瞑想のおかげだと認めているのだ。
ボブ・ジョーンズは十五歳のときに、超越瞑想(TM)を習った。今から四十年ほど前だ。当時の彼は、彼自身の言葉によると「何処へ行くかわからない二流の学生」だった。しかし、TMのおかげで成績を伸ばし、優等生として卒業して、アイビーリーグに属するブラウン大学に入学した。注意欠陥障害だと診断されたわけではないが、少しその傾向があった。いつも不安で歩き回ってばかりいたが、TMのおかげで落ち着いて集中できるようになり、しなければならないことができるようになった。
しかし、数年たつとTMに対する熱意がすっかり失せてしまった。しばらくの間は、瞑想なんて東洋から来た怪しげなものだとバカにしていた。しかし、TMをやめると集中できなくなり、生産性が低下した。それで、間もなくTMを再開して、今に至るまで続けている。
彼は、二十年間、ウォールストリートの一流投資会社のファンド・マネージャーとして、機関投資家たちのために定量的モデルを開発してきた。ストレスの多いトレーダーの世界で、彼は次のように語る。
投資家ボブ・ジョーンズ氏
「TMのおかげで、プレッシャーのある状況でも落ち着きを失わずに、はっきりした頭で考え抜くことができます。ポートフォリオやクライアントに問題があるときには、気が動転して慌ててしまい、間違った決定をしてしまうおそれがあります。ですから、落ち着いた態度で状況を受け止め、冷静に思慮深く対処できることが、特に資産運用の仕事では重要なのです。」
「ストレスを受ける理由はあまりにも多くの事が同時に進行しているからです。しかし、それらの全てが重要なわけではありません。瞑想は私たちが仕事を分類するときに役立にます。『これらはしなければならない仕事だ。これらはあまり重要ではないから、時間があるときにやろう。』そのように、よく考えてフォーカスすることで、たくさんの時間が節約できます。実際に、TMをしないで仕事をしていたときよりも、時間が増えたように思います。」
「このビジネスで大きな成功を収めている人の中には、ストレスを糧にして楽しんでいるような人がたくさんいます。 彼らはストレスがあるから効率的なのかもしれません。多くの人は、締切が近づいて切羽詰らないと決定できません。しかし、長い目で見ると、それは健康のためによくありません。意思決定にとってもよくないと思います。よく考えて情報を集め、しなければならない仕事に落ち着いてフォーカスすれば、もっとよい決定ができるはずです。それに、心臓病、早死、早期引退、燃え尽きなどといったことにはならずに成功できるでしょう。そうした否定的な事柄は、成功は成功でも、ストレスがいっぱいの仕方で成功している人たちに起こることです。」
長年のあいだ、TMは多くの点で彼の役に立った。例えば、タバコ、爪噛み、過度の飲酒をやめられたのはTMのおかげだという。十五歳の時にTMを始めた高校の同級生達は、みんな今でもTMを続けているそうだ。人生におけるTMの役割を、彼は次のように要約した。
「私の人生の成功の大部分は、TMのおかげです。TMは自分の中心を見つけるのに、つまり、私は何であって何になりたいのか、ということを見つけるのに、役立ちました。そうした中心の上に立って、人生のよりよい目標を達成できたのです。」
──ノーマン・ローゼンタール著「超越瞑想 癒やしと変容〜精神科医が驚く効果と回復」より