デヴィッド・リンチ財団は、DV(家庭内暴力)と闘うニューヨーク市長室と提携(2013年)し、DVを受けた人々のトラウマを癒やすために協力関係を結んでいる。
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この協力関係によって、DVの被害者は、市内の家族司法センターで超越瞑想を無料で学ぶことができる。超越瞑想は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の軽減に役立つことが繰り返し実証されているテクニックだ。
こうした専門誌に発表された研究結果は、ストレスやトラウマを克服するための手法として推薦するかどうかを決定する上で助けになる。しかし、それ以上に、瞑想による内側からの癒しの力が、被害者の人生に実際にどのような変化を引き起こしたのかという実話は、より深い感銘を与えてくれるだろう。
そこで、デヴィッド・リンチ財団「女性の健康イニシアチブ」の主任教師レイチェル・カッツさんがLennyletter.comに投稿した記事をご紹介しよう。ニューヨーク市長室と協力して、DVの被害者に超越瞑想を教えてきた経験について、カッツさんは以下のように記している。
肉体的な傷は治っても、心の傷は癒やされない
レイチェル・カッツ:多くの被害者は、肉体的な傷は治っても、感情的な心の傷はその人間関係が終わった後もずっと続くと話しています。
私が出会った被害者の女性たちは、目を閉じて頭の中で一人の時間を過ごすことに抵抗を感じています。やはり、そこにはつらい思いや記憶が潜んでいるのです。彼女たちは生きる喜びを感じることができません。しかし、瞑想するたびに、体は深く根付いたトラウマを癒し、脳はより健康的で統合された形で機能し始めます。
瞑想中の自由な感覚が、気持ちを楽にする
驚かれるかもしれませんが、瞑想を学ぶコースの中で、彼女たちは笑いながら多くの時間を過ごしています。瞑想によって内側で自由な感覚を体験し、自分を責めることから解放され、気持ちが楽になると笑いながら話しています。それまでは、疲労感、恐れ、怒り、痛み、混乱、無感情、打ちのめされた感覚以外は、何も感じることができなかったのにです。
彼女たちは、そうした感情にとらわれて消耗していましたが、瞑想によってそれらを手放すことで、エネルギーが解放されるのです。
DV被害者は、他人を優先しがち……
ある日、若い母親から、一緒に瞑想してほしいと頼まれたことがあります。その翌日、彼女は加害者の男性との裁判で、同じ部屋に居合わせなければならなかったからです。前回の裁判では、彼女は緊張しすぎて、うまく話すことができませんでした。
しかし今回は、落ち着いた気持ちで部屋に入ることができ、相手に対して冷たい態度をとることもありませんでした。当然、怒りや悲しみが生じるだろうと思っていましたが、もう怯えたり、びくびくすることはありません。彼女は楽にゆったりと話して、法廷にいる人たちが自分に敬意を払ってくれていることに気づきました。彼女は自分自身を大切にし、不安や疑惑の念に襲われることはありませんでした。自分が進むべき方向を見て、その方向へと進み続けたのです。
一般に、DVの被害者は、自分のことは構わずに、他人の必要性を優先しがちですが、私たちはまず自分自身を大切にしなければなりません。飛行機に乗るときに受ける指示と同じです。まず自分が酸素マスクをつけて、必要なものを確保してからでないと、他の人を助けることはできません。まず最初に、自分の必要性を満たすことです。
瞑想とは、自分を大切にする行為
ただ、被害者がトラウマやストレスの症状を抱えて生きている場合、自分が何を必要とし、何を望んでいるのかわからないこともあるでしょう。
その場合でも、TM(超越瞑想)で一日を始めることで、目が覚めて最初に行うことが自分を大切にする行為となります。そして、午後遅くにもう一度瞑想することで、夜のための充電となるのです。研究によると、神経系が深い休息を得て、本来の機能を取り戻すと、瞑想の効果は一日中、続くようになることが確かめられています。
徐々に、こうした心と体の機能スタイルが、自然に被害者を力づけて、あまり考え過ぎずに、より自信を持って自分のために最良の選択ができるようになります。
暴力を受けた女性たちと最初にお話しするときは辛いものですが、彼女たちが心の傷を癒やし、回復していくのを目にすることは大きな喜びです。
*下記のデヴィッド・リンチ財団が作成した動画では、DV被害者とその子供が瞑想によって心の傷が癒やされたと話しています。
デヴィッド・リンチ財団「女性の健康イニシアチブ(英語)」
ソース:Healing from within: Relief for victims of domestic violence