2012年7月の初めに、スイスにある欧州合同原子核研究機関(セルン)の巨大なハドロン衝突型加速器のなかでヒッグス粒子が発見され、これは物理学の歴史で最も重要な発見の一つであると発表されました。
それは、宇宙の根底にある統一という究極的な場を科学的に突き止める大きな一歩だったからです。
この発見に関して、もし一人の科学者に感謝を捧げるとすれば、それはアルバート・アインシュタインということになるでしょう。
アインシュタインは、原子のエネルギーの基礎になる方程式や一般相対性理論で有名ですが、実は彼の研究生活の大部分は「統一場理論」と呼ばれる別の理論に向けられていました。この理論は、自然の全ての現象、全ての力、全ての粒子の究極の根底に、たった一つの場が存在すると予測していまいた。
量子物理学の発見によって、分子や原子や素粒子は、その根底にある場の振動であることが明らかになりました。
電子は電子の場から創り出され、陽子や中性子を構成するクオークは、クオークの場から創り出されます。つまり物質的な世界の根底には、物質的ではない場が存在するということです。
アインシュタインは、これらの異なる場はその根底にある一つの場の現れであり、その様々な振動の仕方を通して自然の様々な現象が生じてくると予測しました。
これは私たちがよく知っている現象です。同じ電磁場が異なる波長で振動して、ラジオの信号、光、マイクロ波、赤外線、X線などが生じてきます。
これらの異なる現象が一つの電磁場から同時に生じてくるのです。電磁場の異なる振動は互いに他の振動を妨害することがないので、私たちはラジオや電灯や電子レンジを同時に利用することができます。
同じように、あらゆるものの根底に一つの場があって、それが異なる仕方で振動して、様々な力の場や物質の場が生じてくると考えることができます。
しかし、ここで例えに出した電磁場とその根底にある統一場との間には大きな違いがあります。電磁場の振動は常に外側の力によって創り出されます。例えば、ラジオの信号はラジオの放送局によって創り出され、空間全体に広がったその振動をラジオが受信します。
しかし、統一場のレベルになると、そこには外側からの力は働きません。なぜなら、全ての力は統一場から創り出されるからです。つまり、統一場はそれ自身の内側から振動を創り出しているのです。
統一場がそれ自身の内側から何かを創り出しているのであれば、そこには創造性や知性があるに違いありません。確かに自然のあらゆるものは、むやみに創られているのではなく、たいへん知的な仕方で創られています。創造性や知性は、生命や意識に特有の性質です。
ですから、もし統一場が本当に科学的な実在であるならば、それは知性の場、意識の場であるに違いありません。
5000年前の古代ヴェーダの文献にも、これと同じことが説かれています。
客観的で物質的な世界と私たちの主観的で精神的な世界の根底には、一つの意識の場があります。そして、このレベルでは心と物質が一つに繋がっているのです。
古代のヴェーダの賢者たちはこの真実をすでに知っていました。なぜなら、彼らはこの世界の根底にある統一を自分自身の意識のなかで体験していたからです。
彼らは時の経過によって忘れさられた「超越するというテクニック」をもっていました。この「超越するテクニック」によって、誰もが自分自身の意識の中で、世界の根底にある統一を体験することができます。そして、この統一を体験するとき、私たちは一人ではなく、すべてのものと繋がっていることに気づくのです。