「ただ今より、瞑想タイムに入ります」──校内にアナウンスが流れると、たちまち瞑想ルームは、50人ほどの人でいっぱいになる。瞑想開始の鈴の音とともに、静寂の波が辺り一面に広がった。
これは、島根県益田市にある自動車教習所、Mランドで毎日行われているグループ瞑想での一コマだ。この企業では、疲労やストレスに対処し、社内の効率性と調和を高めるために、一日に二回、20分間、超越瞑想というシンプルな瞑想法を実践している。
グループ瞑想をするMランドの職員の皆さん
くつろげる瞑想室も完備されている
少子化の影響で全国の自動車教習所が相次いで閉鎖しているなか、Mランド(益田ドライビングスクール)は、確実に業績を伸ばし、四輪車部門の卒業者数では日本一だ。経営理念として、若者に運転を教えるだけでなく、心の教育を行っていることでも有名で、その一環として職員は瞑想を行っている。
Mランドでは、23年前に超越瞑想を企業で取り入れ、昨年からは関連会社も含めて、169名の職員が超越瞑想を実践するようになった。長年のグループ瞑想による影響は、会社全体の雰囲気を調和的なものにし、それは職員の創造性、行動の効率性、健康面に顕著な効果をもたらしているようだ。
Mランドの創業者である小河二郎会長は、次のように話している。
「座禅といった精神修養は人として一番しなくてはならないことですが、それは厳しいもので、一般的ではありません。ですから超越瞑想が誰もが簡単に行えるテクニックであると聞いたとき、迷わず、全社員で学ぶことにしました。その後、社員の人相が柔らかく、柔和になっているのを見て、これは瞑想の効果だと実感しました。意識の内面の変化が表情に現れていたのです。これは本当に凄いことです。」
初めての来訪者が真っ先に体験することは、従業員の心暖かな気遣い、優しさといったもので、そこで過ごすだけで、いつの間にか心穏やかになってしまう雰囲気を漂わせている。
ここは、人としてお互いを尊重し、助け合い、高めあう、他の教習所にはない多くの事が学べる場所だ。その評判が口コミでひろがって、島根県の小さな町に、全国から年間6,000人以上の人々が集まってくる。その多くは10〜20代の若者だが、彼らの笑顔がとても印象的だ。