ある出版社の方から「デヴィッド・リンチ監督は、とてもいい人だそうですね」と言われた。私は、もちろん会ったことがないが、アメリカのTM運動に携わっている友人が同じことを言っていた。友人の話では、リンチ監督に会った人はみんな「彼はいい人だ」と口々に認めているそうだ。
「イレイザーヘッド」「ブルー・ベルベット」「インランド・エンパイア」「ツインピークス」といったシュールリアリズム的な彼の映画からは想像もつかない。しかし、「デヴィッド・リンチ財団」を発足させ、超越瞑想を学校に紹介するために世界ツアーを行っていることを考えると、そのことは大きくうなずける。
先日のロサンジェルス・タイムズでは、リンチ監督に、どうしてTM(超越瞑想)に熱心なのかとたずねている。
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リンチ 私は瞑想なんて時間の無駄だと思っていました。しかし、「真の幸福は外側にあるのではなく、内側にある」という言葉を聞いたときに、その言葉に真実の響きを感じたのです。たぶん瞑想が、内側へと向かう方法だろうと思いました。
ある日、妹から電話があり、「TMを始めた」と聞きました。その声は以前よりも幸福で、自信に満ちていました。それで私は、「自分が求めていたものはそれだ」と思ったのです。
その頃の私は、怒り、悲しみ、疑い、憂鬱さでいっぱいで、それを私の最初の妻によくつぶけていました。私は彼女の人生を、地獄のようにしていました。超越瞑想を始めて二週間後、彼女は私のそばに来て言いました。「どうなっているの? 怒りよ。それはどこに行ってしまったの?」。それらは、とても自然に消えてしまったのです。
──学生達には、どのような変化がみられますか?
リンチ ストレスが小さな子供達の心を蝕んでいるとよく言われます。学校では暴力やいじめが頻繁に起こり、子供達はほとんど勉強していません。勉強が楽しくないからです。
しかし、TMを始めると、子供達はもっと知的になり、もっと創造的になり、もっとエネルギーが増し、もっと幸福になります。そして先生の話を理解できるようになります。
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最後に、リンチ監督が大好きなコーヒーについてたずねられると「ほとんどの瞑想者は自然にコーヒーを飲まなくなるが、私にとって、コーヒーと超越瞑想は、馬と馬車のように相性がいい。TMをするために、何かをあきらめる必要はない」と結んでいる。
超越瞑想を行っている人々は、部分的に機能していた脳が総合的に機能し始めることが研究によってわかっている。そのため人は、物事を包括的に捉え、間違いを起こさずに、正しい選択を行うようになっていく。
デヴィッド・リンチ監督は、このことを全世界の人に伝えるために講演活動を行っている。以下のビデオは、米国ボストンのエマーソン大学での講演の一部。
文・KOTOHA